今週の松竹梅第559号「上場株の配当をどう申告するのか?」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年3月4日
昨年12月に完成・発売した相続マンガ「みんなの相続」ですが、おかげで読者の評判は良いようです。調子に乗った私は、先週の「みんなで顧問」ミーティングで、パート2を提案し、制作スタートすることになりました!相続問題は、法務や税務では解決できないと考えています。もっとも重要なアクションは、親族間のコミュニケーションです。「こうあるべき」「自分がもらうべき」のべき論では、事態は悪化します。マンガが伝える力で、コミュニケーションが苦手な日本人の人生後半を豊かにすることが、私の残りの人生に与えられたテーマです。
【今週の松】 「奥が深いぞ!配当所得」
所得税確定申告書で、もっとも目に付く収入は不動産と配当です。今週は、このうち配当について深掘りしましょう。まず、基本知識として、総合課税と分離課税を理解しないと、この後の説明が理解できません。総合課税とは、各種所得を合算して税額を計算するので、高額所得者ほど税率が高くなります。ちなみに、所得税率+住民税率は、課税所得4000万円を超えると55%です。(驚)対して分離課税は、不動産の売却益、株売却益、退職金など特定の所得を「分離」して税額計算します。投資収益による分離課税は、20%にほぼ統一されつつありますが、例外に要注意です。例えば、仮想通貨は、総合課税で、赤字の繰越も他の投資商品との損益通算もできません。非常に不利な仕組みのままです。
【今週の竹】 「意外と有利?上場株配当」
上場株配当は税制上かなり有利になっています。個人の場合は、所得税+住民税で20.315%源泉徴収されています。(NISA口座は非課税です)確定申告時に、このまま申告不要(分離課税)か、総合課税か、申告分離か、3通りの選択が可能です。株式売買で損失がある場合、その損失との損益通算が可能です。複数の証券会社で取引がある場合は、損益通算のためには、申告する必要がありそうですね。配当控除を使う場合は、総合課税が必要です。また、住民税については、令和5年分から、所得税申告のアクションと一致させることになりました。この意味は、申告不要、総合課税、申告分離の選択を、「別々に有利選択はできない」とするものです。
【今週の梅】 「自社株配当は総合課税!」
このメルマガ読者は経営者が多いので、自社株配当に関心があるかもしれません。結論ですが、非上場株の配当は総合課税のみです(泣)。上場株でも大口株主は、やはり総合課税のみです。また、あまり例がありませんが、自社を解散・精算して残った利益は配当として総合課税です。とすると、純資産が多い法人の出口は、株式譲渡がオーナー株主には税務上有利な選択と言えます。(株式譲渡は、非上場株でも20.315%に統一されています。)
【松ちゃんの独り言】 「株式譲渡損の繰越は後出しできるのか?」
年初から株価が爆上がりしてバブル期の再来!と、市場が久々のにぎわいです。しかし、私は個人的にある心配事があります。皆さん、昨年までの株式売買損を、しっかり繰越申告していますか?
実は、損失繰越ルールには、とんでもないルールがあります。それは、確定申告してしまうと、後出しアウトなのです。例えば、年金や家賃と株売買の方が、株で売買損を出した場合、「税額に影響ないのだから、わざわざ松本に株で損した旨の書類を出すのは嫌だなあ」と考えたとします。とすると、年金と家賃で「確定申告」完了なので、今年になって、多額の利益を出してから、昨年申告で漏れてたからと言って出されても損益通算できません。ただし、確定申告していない方は、今からでも繰越可能です。確定申告は、それほど重要な意思表示なのです。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版