今週の松竹梅第567号「驚くほど複雑な定額減税」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第567号「驚くほど複雑な定額減税」

配信日:2024年5月7日

5月になりました。経理担当者にとっては、昨年のインボイス制度導入に続き、事務負担が多い「定額減税」の準備をそろそろスタートするタイミングです。 この「定額減税」は、減税なる響きとは裏腹に、非常に評判が悪いです。 私自身、制度概要を知れば知るほど、あまりの複雑さに驚いている状況です。 今回は、定額減税の概要をざっくり紹介します。

【今週の松】 「所得税3万円、住民税1万円」

まず気になる減税額ですが、所得税3万円、住民税1万円です。この金額は本人の他、親族についても1人につきの金額です。ただし、対象は合計所得1805万円以下の人に限定されてます。なぜ1805万円?ですが、給与収入だとちょうど2000万円です。さて、この金額をどうやって減税するのかが問題です。具体的には、6月給与の源泉所得税から順次差し引く方式です。住民税については、あまりに複雑で書き切れません。

【今週の竹】 「引き切れなければ7月以降の給与計算で」

6月からの給与計算で定額減税処理がスタートしますが、引き切れない場合は、各人ごとに減税残高を管理して、7月以降の給与計算で差し引くことになります。給与計算がない、例えば年金受給者は、年金に係る源泉所得税から差し引かれているとのことです。個人事業者は確定申告で控除することになります。

【今週の梅】 「年税額でも引ききれなければ給付金で」

ここで疑問ですが、年末調整や確定申告で、年税額が0の場合で定額減税が引き切れない場合はどうなるのでしょう? 引き切れない金額は、自治体が「給付金」として振り込むことになります。 これは、自治体の事務負担もかなりきつそうです。 なお、給付金は「万円単位端数切り上げ」だそうです。 例えば、引き切れなかった所得税と住民税の合計額が、1500円なら1万円給付されることになります。

【松ちゃんの独り言】 「定額減税の対象者」

定額減税の対象者は、給与計算では、扶養控除等申告書で判断します。 とすると、年の途中で生まれた子供は対象でしょうか? これについては、結論は今年の12月31日時点の扶養親族まで対象ですが、7月以降に生まれた場合は、年末調整で精算されることになります。 また、給与収入2000万円超見込みでも、6月給与計算では定額減税の対象として、年末調整または確定申告時に対象外と確定した時点で減税分を徴収するルールになってます。 なんだか不思議なルールですね。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版