今週の松竹梅第571号「悪質なM&A仲介会社に乗ってはいけない!」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第571号「悪質なM&A仲介会社に乗ってはいけない!」

配信日:2024年6月3日

中小企業の「後継者がいない」問題は、さらに深刻さを増しているようです。ここ数年は、中小企業庁も第三者承継、いわゆるM&A推進に注力してきました。ところが、それとともに増えているのがM&Aトラブルです。悪質な買収先に翻弄される悲惨な事例も散見されますが、そもそも糾弾すべきはM&A仲介会社の無責任ぶりです。引退後の老後を台無しにしないために、悪質なM&A事例を紹介します。

【今週の松】 「悪質な仲介事例の背景」

悪質なM&A仲介事例は氷山の一角です。まず、なぜそんな事態になるのかを知らなくてはいけません。もっとも大きな要因は、「仲介報酬が高いこと」です。大手でも、成約代金の20%程度が「普通」なので、1億円程度の案件でも往復で4000万円もの収入になります。よって、会社に売り案件が出れば、仲介担当者は「熱心に」成約に向けてまとめようとするでしょう。交渉途中で多少の問題があっても、仲介担当者は成約最優先です。成約後に売主か買主に、大きな問題が勃発しても、仲介会社はまったく責任を取りません。その時点で、当事者である経営者は相手先をほめたたえる「熱心な」仲介担当者の別の顔を見ることになります。そうなってからでは、遅いのですが。

【今週の竹】 「売り登録案件がターゲットに!」

不動産のように、年々マッチングサイトによる会社の売り買い登録が増えてきました。売りたい会社は、もちろん後継者がいない高齢の創業者が多いので、事情は切実です。そんな希望を打ち砕く悪質な買収グループが存在します。手口としては、売り案件から、現預金残高や生保や有価証券など金融資産がある会社に買収を持ちかけます。次に、創業者の個人保証を外し、退職金も出して、従業員の雇用も守る、など説明します。あるグループは、売上100億円以上の急成長会社と標ぼうして、「会長」と「若手社長」の2名で、短期間に多くの会社を買収したとのこと。ところが、株式譲渡契約後も、創業者の個人保証は外されておらず、金融資産は外部流出して、給料も払えなくなり、ものの数か月で、事業破綻する会社が次々と出る悲惨な事態に。この時点で、買収先の親会社の売上100億円の決算書を、誰もみていないことにようやく気が付きます。M&Aの世界では、売り側の会社ばかり決算書や申告書を出せと言われますが、買い主側の「本当の業績」は意外と盲点ですね。

【今週の梅】 「責任を取らないM&A仲介会社」

上記事例は新聞記事からの実際の事例なのですが、 大手のM&A仲介会社でも、似たような事例が頻発しているようです。 しかも、大きなトラブルになっても仲介会社は、「我々は仲介しただけで契約したあなた方に責任があり、我々は一切責任がない」との姿勢で一貫しています。これは、不動産仲介取引と比較すると、情けないほど後進的で野蛮なマーケットだと感じます。 中小企業庁はは、M&A成約件数の伸びばかり関心があり、M&A仲介業者には実に甘い態度に見えます。

【松ちゃんの独り言】 「高齢の創業者にまかせておいて良いのか?」

今回は、日本のM&Aの闇の部分ばかり触れましたが、 逆に、感動の事例も多いのも事実です。結局は、「その時に」出会った仲介担当が、本物かどうかは運次第では、関係者も困りますね。 上記の事例も、当初挨拶時の買収先関係者の名刺でネット検索すれば、「ん、怪しい?」との感触は簡単につかめたはずです。 ところが、M&A仲介担当は「守秘義務」をネタにして、高齢の創業者に他者に相談しないように念押しします。 次回は、「ではどうすればよいのか?」の対策に触れていきます。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版