今週の松竹梅第572号「定額減税の謎ルールをご堪能ください!」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年6月10日
今週はM&Aについて前回の続きの予定でしたが、定額減税の問い合わせが急増しており、対応があまり進んでいないようなので、「定額減税のツボ」を紹介することにしました。 給与実務関係者は真剣に、経営陣は謎ルールを楽しみながら、呆れながら読んでください! 読解力が要求されるルールです。
【今週の松】 「対象者は誰?」
定額減税対象者は、所得税については、令和6年分の合計所得1805万円以下の居住者と、その扶養親族1名につき3万円です。まず、ここでの注意点は、「居住者」であること。つまり、海外居住の扶養親族はカウントしません。一方、年齢制限がないので、年内生まれの子供もカウントされます。ところが、6月スタート時では、合計所得が1805万円以下かどうか不明のため、「全員を対象にすること」とされてます。ちなみに、なぜ1805万円?ですが、給与所得控除の上限が195万円のため、給与で2000万円超が足切りラインです。話を元に戻すと、給与2000万円超だと年末調整しないで確定申告になりますが、その申告時に、定額減税がカットされるので、納税額が3万円加算されることになります。住民税については、「令和6年度分」で以下同文の1万円です。足すと4万円ですね。ここで要注意!住民税の「令和6年度分」は令和5年分なんですよ。つまり、給与年収2000万円ギリの方は、減税対象が年ずれする可能性があります。すでに謎ルール満載ですね。皆さん、ここまで大丈夫ですか?
【今週の竹】 「給付金の謎ルール」
すでに対象者で謎ルール満載でしたが、住民税の前年基準は、自治体の事務を進めるためです。前年データで対象を確定すれば、住民税納税通知が出せるからです。よって、住民税については、給与事務担当は通知書の通りに給与計算すれば良いのです。なお、6月分は原則全員0円ですが、まれに6月分で5000円徴収の方がいます。1名あたり合計4万円だと、年末調整でも引き切れない方が多いかと思います。引き切れない金額は、自治体から給付金として直接振り込まれるようです。この給付金は、上記ルールで推計して、年末調整を待たずに「先に」振り込まれるようです。とすると、今年の年収によって、給付金に過不足が出ますね。ここで、衝撃のルールですが、自治体が先に多く振り込んだ場合は、返金は必要なし、少ない場合は、追加で振り込むとのことです。さらに、振込金額は、万円単位切り上げとのことです。自治体も大変ですよね。笑
【今週の梅】 「給与以外の所得ありの方は?」
年金収入のみの方は、年金の源泉所得税で引かれるので、特にやることなしです。 年金で引き切れない場合は、上記の給付金が自治体から振り込まれます。 不動産貸付収入や事業主は、予定納税等で税務署側が調整するらしいのですが、現実的には、確定申告時に精算か、給付金待ちになりそうです。 また、定額減税は、住宅取得控除やふるさと納税などの後で控除する仕組みなので、定額減税を受けたために例年の控除が不利になることはありません。
【松ちゃんの独り言】 「定額減税の負担」
1回限りの定額減税、誠に評判が悪いのですが、減税&給付総額と事務負担は
どれくらいなんでしょうか。鈴木財務大臣会見によると、
減税で3.3兆円、給付を含めて5.5兆円規模とのこと。
事務負担については、自治体限定で700億円との試算だそうです。
この中には、給与計算事務担当者の負担はカウントされてません。
対象者の年ずれとか、給付1万円単位、その他の謎ルールについては、「事務負担の軽減のため」との会見記録が残っています。
この考え方も謎ですね。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版