今週の松竹梅第574号「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例は使えるのか?②」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年6月24日
前回「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例が使える」ことを取り上げました。今回は、もう少し掘り下げてみます。実は、この特例を使うために入居後「やってはいけないこと」があります。 個人的には、節税のために希望がかなわないのは、良くないことだと考えています。しかし、知っていたかどうかで、後々相続税額が大きく違うなら知っている方が良いですね。
【今週の松】 「特例対象になる老人ホームとは」
小規模宅地特例対象になる老人ホームは、どこまでの範囲を言うのでしょうか?2014年改正以前は、ほぼ特養(特別養護老人ホーム)のみが特例対象でしたが、改正後は、有料老人ホームでも対象になりました。有料老人ホームは、老人を入居させて「食事の提供」「介護サービスの提供」「家事サービスの提供」「健康管理」のうち1種以上のサービスを提供している施設を言い、「介護付」「住宅型」「健康型」など、対象範囲は広いです。ただし、「有料老人ホーム」として届出が必要なので、未届け施設に入居していた場合は、特例対象外になります。戸建て型の小規模施設の場合、未届けの場合があるので、確認すべきです。
【今週の竹】 「入居後に自宅の状況を変えると特例が使えない!」
老人ホーム入居後でも、元の自宅を自宅として小規模宅地特例を使う場合、重要な注意点があります。それは、ホーム入居時の自宅の状況を維持しないと特例対象にならない点です。大いにあり得るのは、自宅が空き家になるのは、もったいないからとして賃貸したり、他の家族が新たに住むことです。いずれも、その事実が発生すれば、自宅として特例対象にすることができなくなります。賃貸をやめたり、他の家族が住まなくなっても特例対象に戻れません。なお、ホーム入居時に同居していた家族については、そのまま住んでいても特例対象のままです。つまり、ホーム入居時の状況を変えなければ、特例対象を維持できることになります。
【今週の梅】 「状況を変えてしまったら」
現実には、相続税の特例対象になることを検討しつつ、老人ホームに入居する方はまれでしょう。むしろ、空き家にするより有効利用を考える方が自然です。 自宅がマンションなら、なおさらですね。 賃貸の場合は、80%評価減になる自宅特例は使えなくなりますが、賃貸事業特例として、50%評価減の対象になる場合もあり得ます。 新たに家族が住み始めた場合は、いったん特例の対象から外れますが、老人ホーム入居中の家族と「生計一」とみなされれば、再び80%評価減の特例対象になる場合があります。
【松ちゃんの独り言】 「ハードルが高い相続税特例の生計一」
今回「生計一」なる用語が出てきました。相続税の世界で「生計一」はあちこちに出てきますが、別居家族の場合、かなりハードルが高く、ほぼ認められていないようです。老人ホーム入居の場合、元の自宅を自宅として認められても、その後入れ替わりに引っ越してきた家族が自宅特例を使うには「生計一」が条件になりますが、実際には、別居しているため、認められることは、ほぼありません。
老人ホーム入居前に同居していれば、かなり認められやすくなります。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版