今週の松竹梅第581号「親子間の土地使用貸借をしっかり考える!」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第581号「親子間の土地使用貸借をしっかり考える!」

配信日:2024年8月19日

これまで、相続税や不動産のいろいろなトピックスを取り上げてきました。しかし、一度も取り上げていない大きな分野が「借地権」です。借地権は、法務と税務で取扱いが大きく違いますし、税務も相続税や贈与税、所得税、法人税など税目によって取扱いが違います。さらには、同じ状況に見えても、課税されたりされなかったりで誠にやっかいな、それでいて重要な権利が「借地権」です。今回は、超入門編として、親子間や夫婦間でよくある「使用貸借」を取り上げてみました。

【今週の松】 「まず使用貸借とは何かを考える」

「使用貸借」とは、「無償で借りる契約」です。前提としては、親子間や夫婦間でしばしば「使用貸借」状態になってますね。具体的には、親の土地に子が自宅を建てる、妻名義の土地に夫がアパートを建てるなど、事例は多いです。多くの親は、子からいちいち地代を受け取りたくないですからね。使用貸借の場合は、一切課税関係は発生しません。もちろん、借地権もありません。よって、親の相続発生時の土地評価は、更地評価になります。さらには、ほぼ小規模宅地の特例も使えません。つまり、相続税がもっとも高くなる選択をしていることになります。

【今週の竹】 「固定資産税の負担はどちらなのか?」

子が複数いて、特定の子(長男事例が多い)が、親の土地に自宅を建てている場合は、相続発生時に、他の兄弟姉妹と争いになるパターンがあります。そんなときに、よく話題になるのが「あいつは固定資産税も払っていない」との言い分。さて、このケース(使用貸借)で、土地の固定資産税などの支払い義務は地主である親なのか、借りている子なのでしょうか?民法によると、「借主が必要経費を負担する」とあります。よって、子が負担すべきとされてますが、現実的には親が負担しているケースも多いと考えられます。この場合は「贈与」に該当しますが、実務上はノーマークです。

【今週の梅】 「賃貸借なのか使用貸借なのかは超重要!」

上記とは逆に、親に地代を払って大変な事態になるケースもあります。
事例①使用貸借から数年後に、固定資産税の3倍を地代として支払ったところ、「借地権の贈与」があったと税務署から指摘され巨額の贈与税課税
事例②固定資産税の1.5倍を地代として受け取っていた親の相続発生時に、貸地評価で相続税申告したところ、地代が安いとして使用貸借と判断され、貸地評価が否認される
①と②は立場が真逆の結果ですが、ますます借地権が苦手になりますね。 なお、「相当の地代」を支払っていれば借地権贈与課税はセーフ!なる通達もあります。具体的には、更地時価の6%程度とされているので、結構高いです。

【松ちゃんの独り言】 「親子間の地代はどうすれば良いのか?」

今回は、借地権に入る前の「使用貸借」を取り上げましたが、モヤモヤしたかと思います。結論として、親子間で地代は払った方が良いのか? 良いなら、どれくらいがベストなのか?との疑問がありますね。 この回答については、親族の状況や、小規模宅地特例が使えるかどうか、などで、まったく回答が違ってきます。 よって、結論は、親の土地を親族が使っている場合は、 ケースバイケースなので、自分で考えないで専門家に相談すべきです。 と終わると、ますますモヤモヤしてしまいますね。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版