今週の松竹梅第586号「意外と簡単な企業価値の算定」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年9月24日
このメルマガの読者は経営者を想定しているのですが、皆さん自社の企業価値を考えたことがありますか?わかりやすく言い換えれば「株価」ですね。もしかしたら、ネットで学ぼうとして、「DCF法」「コストアプローチ」「ゴードンモデル」など恐ろし気な理論説明が延々と出てきて、挫折&玉砕したのではないでしょうか?実は、中小規模M&Aマーケットで算定されている企業価値=株価は、拍子抜けするほど簡単で、お手元の決算書から自分で計算できます。M&A業者の株価算定理論は、M&A専門家としての「権威付け」として使われている傾向があり、実際の株価算定にはほぼ使われてません。
【今週の松】 「身近だけど安い相続税評価」
経営者の手元には、様々な資料が届くと思いますが、「株価」については、取引先銀行がサービスの一環として、株価評価書を持ってくることがあります。この「株価」は、概ね「相続税評価」です。「相続税評価」による株価はかなり安いので、経営者には少々がっかりするかもしれません。「相続税評価」による株価を使う局面は、まさに相続発生時を目的としているので、相続人としては、安い方が税負担が軽いので助かりますね。株価算定の仕組みは、純資産より安い場合がほとんどなので、「解散価値」より安いことになります。その金額では、第三者に売る経営者はいないと思います。「相続税評価」による株価については、改めて取り上げますが、今回は企業価値としての株価を考えてください。
【今週の竹】 「企業価値は純資産+利益」
第三者向けの企業価値=株価を算定する実務的な計算は、BS(貸借対照表)の純資産+ 3〜5年分の利益で計算されます。とすると、現実として純資産が債務超過で利益も出ていなければ 自社の企業価値は0なのか?となりますが、ここからは少々考えてください。BS上の資産に、生命保険や倒産防止共済などの簿外資産や、有価証券含み益、不動産の含み資産がありませんか? またはカスタマイズされた機械類や、立ち上げが面倒な事業の許認可にも、価値があるかもしれません。
【今週の梅】 「意外と大きい修正利益」
次に「利益」ですが、決算書上の利益ではなく、役員報酬その他の経営者一族に係る経費を利益に加算します。経営者家族全員の役員報酬や給料の他にも、法定福利費、交通費、車などの減価償却費、駐車場代、自動車保険、経営者の社宅費、接待交際費など、つまり「引退」したら発生しない経費すべてが加算対象です。どうでしょう?決算書上の利益よりはるかに大きい利益が計上されたはずです。業種や状況にもよりますが、この修正利益の3~5年分で企業価値を算定することが一般的です。
【松ちゃんの独り言】 「廃業は意外とマイナスになる」
本日は、自社の企業価値は、経営者が思ったより高い?ことを取り上げました。逆に、廃業はどうなるでしょうか。在庫処分、店舗やオフィスの原状復帰、スタッフの退職金、取引先への挨拶&連絡、借入金返済などBSの範囲内で後始末しなければいけません。廃業すれば修正利益は0になります。「引退するなら退職金もらって会社はたたむよ」とこれまで何度か聞きました。経営者が思うより、廃業の影響もまた大きいものです。個人的には、なんとか事業継続を一緒に考えたいと思ってます。次回は、事業利益の実際の数値を当てはめて計算してみます。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版