今週の松竹梅第588号「相続税の特例は期限後でも使えるのか?」

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今週の松竹梅第588号「相続税の特例は期限後でも使えるのか?」

配信日:2024年10月7日

相続税申告での節税の2本柱が「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地の特例」です。この特例は、原則として当初申告で使うことを要件としています。つまり後出しアウトですね。例外が、相続人の間で揉めてしまい、未分割の場合に申告書提出と同時に「3年以内の分割見込書」を添付することです。それでは、特段理由なく、「なんとなく」期限後になってしまった場合は果たして特例は使えるのでしょうか?

【今週の松】 「10ヶ月は意外と短い」

相続税の申告期限は相続発生後10ヶ月です。この「10ヶ月」は、状況によっては、意外と短いものです。相続人が複数いて、揉めていなくても、高齢者だったり、遠隔地だったり、会社員だったりで、簡単そうな手続きでも1,2ヶ月かかったり、書類がみつからなかったりで、あっという間に申告期限になってしまうこともあります。この間に、「特例を使えば相続税は0円」と考えて、相続税申告しなくても良いと考えてしまうケースもあるようです。しかし、特例は申告書に記載して初めて適用できるので、0円なら申告しなくても良いわけではありません。

【今週の竹】 「申告期限までに分割されている場合」

申告期限までに分割されている場合は、期限後申告でも、「無条件で」特例を両方とも適用可能です。税法条文では「期限内申告書」ではなく「相続税申告書」と書かれており、「期限後申告書」も含むからです。具体的には、遺言書があるケースや、申告期限ギリギリで分割協議がまとまった場合での期限後申告書です。このケースでは、特例は使えるものの、無申告加算税や延滞税の対象になります。税額が0円ならば両方とも課税されませんが。

【今週の梅】 「申告期限までに分割されていない場合」

申告期限までに申告書提出なく、分割もされていない場合は要注意です。このケースは適用できないとする記事もネット上に見受けられますが、結論としては、条件付きで両方の特例ともに適用可能です。条件とは、申告期限から3年以内に分割協議をまとめて、「3年以内の分割見込書」を添付して提出することです。分割協議が整った段階で、分割見込書を添付するのは妙ですが、条文の流れから安全策として添付することになります。このケースでは、もし提出期限から3年を超えてもなお、分割確定していない場合は、特例は適用できないことになります。

【松ちゃんの独り言】 「相続税申告の案内」

家族が亡くなると、しばらくして遺族に税務署から「相続税についてのお知らせ」が届くことがあります。死亡届は自治体に提出されますが、自治体は所轄税務署に死亡情報をすべて通知することになっています。通知された税務署は、生前の申告情報などから、税務署ごとに一定の基準で遺族に「お知らせ」を郵送する仕組みです。以前あったケースでは、亡くなって2年半後に「お知らせ」を受け取った方がいました。受け取った本人も、亡くなった方を知らなかったのですが、戸籍を辿ると確かに法定相続人でした。税務署は、期限関係なく、戸籍から調べているのですね。税務署恐るべし!
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版