今週の松竹梅第592号「役員退職金でもっとも気を付けるべきこと」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第592号「役員退職金でもっとも気を付けるべきこと」

配信日:2024年11月5日

零細企業の税務は、役員が使ったお金の処理に非常に神経を使います。最近は、年金事務所対策とセットになった「事前届出確定給与」もトラブルが多く悩ましいです。しかし、金額のインパクトでもっとも大きなダメージは、「役員退職金の否認」です。幸いにも、私は開業以来、役員退職金で揉めたことはありませんが、否認事例が毎年かなり発生していると聞きます。役員退職金トラブルは起きてからでは取り返しがつきません。経営者は、なぜ役員退職金でトラブルが発生するのか、今回の記事で理解してください。

【今週の松】 「役員退職金トラブルの3パターン」

役員退職金トラブルには大きくわけると3パターンあります。「登記のみ辞任で実際に辞めていない」「金額がやたら多い」「手続き不備で計上されている」の3パターンです。どうでしょう、ワンマン創業者が自分で支給額もタイミングも決めて周囲が困惑している雰囲気が見えますね。創業者でけでなく、その配偶者(いわゆる会長夫人)や、名前だけの創業者一族役員の退職金もトラブルあるあるです。

【今週の竹】 「退職していないとの指摘事項」

国税当局側が「退職していない」と判断するケースは非常に多いです。個人的には、ここまで何もするな!と言うのか?との感触もあります。・重要な意思決定や契約、クライアントに関与を続けている
・名刺の肩書きや社内の呼び方が、いつまでも会長などとされている
・銀行や税理士とのミーティングに出席している
・頻繁に出社して影響力を維持している
など、抽象的な指摘も多く、セーフかどうか判断が難しいのですが、退職金を受け取るのであれば、しっかり支給後の役割を税務面からも検討すべきです。

【今週の梅】 「最終月額×勤続年数×功績倍率を都合良く解釈はダメ!」

役員退職金と言うと、「最終月額×勤続年数×功績倍率」の算式がよく使われます。一見単純な算式ですが、ここでも都合の良い解釈でのトラブルが多いです。例えば、最終月額を退職金支給直前に急に上げたり、ピークを含めて平均したり、「事前届出賞与」を含めたり。功績倍率に創業者として功労者加算したり、以前退職金を受け取っているのに、創業以来の勤続年数で計算したり。 事例を聞くと、なぜそんな強引な支給を?と思いますが、ワンマン創業者には意見しにくいようです。泣

【松ちゃんの独り言】 「分掌変更した場合の退職金支給」

創業者は、いきなり完全引退ではなく、社長→会長などでワンクッション置いて、その際に退職金を支給する場合がありますね。このケースで使われるのが、この通達です。
・常勤役員が非常勤役員になったこと
・取締役が監査役になったこと
・分掌変更後の給与が50%以上減少したこと
この通達には、但し書きがあり「経営上主要な地位を占めていると認められる場合を除く」「未払金に計上したものを除く」とあります。くれぐれも創業者退職金は、「立つ鳥跡を濁さず」を心がけてください。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版