今週の松竹梅第608号「税務署は何を知っていて何を知らないのか?②」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

配信日:2025年2月24日
メルマガ読者の皆さんは、税務署が納税者の情報をむやみやたらと集めているような印象を持っているようです。実際は、銀行や保険会社その他関係者は、税法により支払調書などのデータを提出しています。提出義務がないデータは、調査対象にならなければ税務署は知ることができません。税務署は何を知っているのかシリーズのパート2は生命保険会社からのデータです。
【今週の松】 「2つの金額基準で支払調書が提出される」
生命保険会社は一時金や年金を支払う場合、金額により「支払調書」を税務署に提出することになっています。一時金の場合は、「1回の支払金額が100万円を超えるもの」、年金支払の場合は「その年の年金支払金額が20万円を超えるもの」について、支払調書が提出されます。ただし、年金の場合、契約者と年金受取人が異なる場合は支払金額に関わらず提出されます。生命保険については、このルールのみで長年運用されてきました。
【今週の竹】 「契約者死亡による契約者変更」
2つの金額ルールに加えて、2018年1月1日から、お金が動かないケースでの支払調書が提出対象になりました。 契約者が死亡し、新しい契約者に変更された場合、解約返戻金相当額や既払込保険料の総額が「保険契約者等の異動に関する調書」に記載され、税務署に提出されます。例えば、契約者が父、被保険者が母で、父が死亡した場合、死亡保険金は発生しませんが、契約者を子に変更すると、解約返戻金を引き継ぐことになるので、相続財産に加算されます。これが申告漏れ多発だったようで、税務署側も把握しやすくするため提出対象になったようです。
【今週の梅】 「契約者死亡以外の理由で契約者変更した場合」
このタイトルでピンと来た方は、なかなか鋭い経営者です。このケースは、契約者変更時点では調書は提出されません。しかし、一時金支払の際の支払調書に「過去の契約者変更」が記載されます。税務署側の狙いは、一時ブームだった低解約返戻率逓増保険の名義変更プランです。契約者が法人、被保険者が代表者で、数年間解約返戻率が低い段階で代表者に契約者変更して、解約返戻率が跳ね上がった段階で解約して返戻金は代表者が受け取るプランです。このスキームは、支払調書で終わらず、その後も法人の資産計上ルールも強化されたため、現時点ではほぼ消滅しました。
【松ちゃんの独り言】 「確定申告書の生命保険料控除記載しすぎに注意?」
生命保険会社から税務署に届くデータは、種類としてはシンプルです。2つの金額基準と契約者変更のみですからね。実は相続税申告の際に税務署側は、生前の確定申告書を確認することがあります。調査官は申告書の生命保険料控除を見ています。ここで、届いた控除証明書をすべて記載すると、中には契約者が子で親が支払っているものも含めてしまうかもしれません。すると、「契約者変更していない」のに、支払者が親だったとして解約返戻金を相続財産に追加させられることがあります。どうでしょう。今回は少々ハイレベルな情報で、慣れないと理解しにくいかもしれません。このシリーズはまだ続けますので頑張ってくださいね。
それでは、次回もよろしくお願いします!

【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版