今週の松竹梅第609号「所得税の損益通算は奥が深い!」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

配信日:2025年3月3日
確定申告シーズン真っ最中です。毎年この季節になると思いますが、法人税や相続税は、税理士でなくても詳しい方がたまにいます。しかし、所得税は範囲が非常に広い上に複雑すぎて、所得税の全貌を多少でも理解している方は、非常に少ない気がします。総合課税か分離課税か、損益通算や損失繰越が可能か、退職金と年金のどちらが有利か、など金額が大きくなるものは選択によっては税額で莫大な差額が発生するケースがあります。法人税や相続税と違い、所得税についてはネット記事も少ないですね。
【今週の松】 「損益通算の基本中の基本」
今回は、個人の節税でテーマになりやすい「損益通算」を取り上げます。損益通算とは、例えば「事業」の赤字と給与を合算して所得を計算する考え方です。前述のように、所得税の仕組みは複雑なのですが、ざっくりいうと、同じ種類の所得は通算可能です。同じ種類とは、10種類の所得の種類ですが、同じ種類の所得でも「総合」と「分離」は通算できません。また、「分離」譲渡所得でも「不動産」と「株式等」は通算できません。
【今週の竹】 「4つの所得は損益通算できる」
基本的には同じ所得のみ損益通算できるのですが、「不動産(貸付)」「事業」「譲渡」「山林」の4つの所得は他の所得と損益通算できます。この4つのうち、「山林」はほとんどないですし、「譲渡」もかなり限定されますので、現実は「不動産」「事業」の2つを理解しておけば良いです。なお、総合譲渡のうち、「生活に通常必要でない資産」の損失は通算できません。結論として、損益通算の基本パターンは、「事業」赤字と給与の損益通算による還付申告になります。しかし「事業」赤字を連年続けると、その事業性を否認され「雑」赤字の切り捨てとされる可能性があります。
【今週の梅】 「雑所得内の損益通算は可能!」
総合課税での雑所得内の損益通算は可能です。上記までを読み解くと当たり前の結論ですが、実はなかなか奥が深いのです。雑所得と言えば、年金です。場合によっては年金収入による雑所得を 雑所得内の損益通算によって「節税」可能かもしれません。例えば、為替差損、仮想通貨の売却損、個人としての貸倒などがそうです。また、生命保険の満期保険金や解約返戻金は一時所得対象ですが、同じように、生命保険解約によって損失が発生した場合は、一時所得内で損益通算可能です。
【松ちゃんの独り言】 「昔は良かったなあ、なんでも損益通算」
私がこの業界に転職したころは、損益通算可能なものが多く経営者がやたらと個人から法人へ名義変更して「節税」していました。ゴルフ会員権や賃貸不動産でも当時は給与と損益通算が可能だったのです。今となっては懐かしいですね。これらの含み損は金額が大きいので、こちらからの提案で給与分の源泉所得税が還付になると大変感謝されたものです。大きな含み損のマンション名義変更で2000万円近い還付を実現できたこともありました。
それでは、次回もよろしくお願いします!

【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版