今週の松竹梅第634号「上場株式損失の繰越控除の当初申告に注意!」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

配信日:2025年9月8日
こんにちは。 松本事務所メルマガ「今週の松竹梅」第634号を配信します。 ここ数年来、上場株、不動産、金、ビットコインなど、すべての資産価額が上昇しています。 となると、確定申告による課税が心配になりますね。 資産課税は給与や事業、年金などと違い、特例や分離課税、損失繰越制度など複雑です。 うっかりミスで、特例が使えなかったり、損失繰越ができていなかったりすると大変です。 今回は、上場株式の損失繰越のツボ「当初申告」をしっかり理解しましょう。
【今週の松】 【今週の松】「損失繰越制度とは?」
上場株式に限らず、FX先物取引や居住用不動産の売却損、青色個人事業の事業損失などは、その損失を3年間繰越することができます。ただし、多くの損失繰越制度は、「当初申告」で損失を申告しなければいけません。
とすると、もっとも損失繰越が漏れやすいのが上場株式です。
上場株式売買損益については、多くの方が特定口座にしており、「申告不要」と思い込んでいるからです。
よって、損失が出ても確定申告しない方が一定数いると考えています。
【今週の竹】 【今週の竹】「当初申告の意味をしっかり理解する」
さて、今回のメルマガの趣旨はここからです。 例えば、2024年に株式売買で損失が出たとして、2025年に確定申告をした方としない方とでは、その後の展開が大きく違います。 確定申告しない方とは、給与収入のみで年末調整で完了する方ですね。 この場合は、損失繰越の申告をしていませんが、確定申告もしていないので、2025年の株式売買で利益が発生した場合、2024年分の確定申告を期限後に提出すれば、「当初申告」をしたことになりますので、繰越控除をうけることが可能です。 ところが、個人事業主や医療費控除、ふるさと納税、年金収入合算などで、「繰越控除の申告をしないで」確定申告した場合は、後から繰越控除を追加できません。 「当初申告要件」があるからです。
【今週の梅】 【今週の梅】「繰越控除や特例は後出しアウトが多い」
上記は、ざっくり読むとわかりにくいかもしれません。 例えば、申告不要の給与所得者が3年連続株式売買で損失を出したとします。 この方が3年のうち、1年だけ医療費控除を受けるため確定申告したとします。 その後、株式売買で利益計上した場合は、3年のうち医療費控除を受けるため確定申告した年分の赤字はアウト、他の2年は期限後申告でも繰越控除できます。 ただし、期限後申告については、年の順番に提出しなければアウトです。 順番が入れ替わると、繰越が後出しになってしまいます。 繰越控除や特例は「後出しアウト」が多いので注意してください。
【松ちゃんの独り言】 【松ちゃんの独り言】「複雑すぎる資産税制」
投資関連税制は、損益通算や損失繰越、当初申告要件など、非常に複雑ですので、ネット記事で理解するのは非常に危険です。 ネット記事だけでなく、ChatGPTも税務についてはまだまだ間違いが多いのでやはり要注意です。ChatGPTが税務判断を間違えるのは理由があり、税制改正に追いついていないためと言われています。 それでは、次回もよろしくお願いします!

【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版