今週の松竹梅第642号「妻名義の口座残高はなぜ夫の名義預金なのか?」

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今週の松竹梅第642号「妻名義の口座残高はなぜ夫の名義預金なのか?」

配信日:2025年11月4日

こんにちは。 松本事務所メルマガ「今週の松竹梅」第642号を配信します。 11月になりました。2025年もあと2ヶ月、ふるさと納税や贈与など、やり残したことに着手しないと、間に合わなくなるタイミングです。 今回は、相変わらず相談が多い「贈与」のうち、お客様と我々税理士の認識が違う「専業主婦の預金残高」についてまとめてみました。

【今週の松】 【今週の松】「専業主婦の預金残高は誰のものか?」

贈与税申告をしていると、親から子や孫への贈与は多いのですが、配偶者への贈与税申告は滅多にありません。おそらく夫からすると、妻には生活費としての「お給料」を渡しているから必要ないと考えているのでしょう。
相続発生の際に、妻名義口座に多額の残高があったら税務署側はどう判断するのでしょうか。
相続人である妻側は、「自分が必死にやりくりして残したお金だから自分のお金」と言いますが、残念ながら多数の事例は、名義預金として「全額」相続財産に加算されています。

【今週の竹】 【今週の竹】「名義預金にされないケースは?」

では、妻名義口座に多額の残高があっても、名義預金指摘されないケースを考えてみましょう。それは妻本人が「生活費をもらう」のではなく、収入を得ている場合です。例えば、夫が経営者で、妻も役員報酬を得ている、夫が個人事業主で妻が専従者給与を得ている、妻が賃貸不動産を所有しており、賃貸収入を得ている、やや視点を変えると、実家からの相続財産を得ているなど、預金残高が残っている理由を説明できれば、名義預金の指摘を回避できます。 なお、原資は夫の資金で妻が運用しており、残高が増えた場合は増えた部分については、名義預金ではないと主張することも可能です。

【今週の梅】 【今週の梅】「生活費は贈与契約か?」

思いがけなく、名義預金指摘を受けてから、生活費は夫から贈与された資金であり、贈与税の時効を過ぎているから名義預金ではない、との主張で争った事例がありますが、名義預金との結論です。 理由は、贈与契約の証拠を明確に提示できなかったからです。 苦労して貯めたいわゆる「へそくり」が自分のものでない!と指摘するのは、私も申し訳なくて忍びないものがあります。 であれば、「生活費として渡す」のではなく、説明できる収入や、110万円贈与を使って、名義預金などと言われないようにしてほしいです。

【松ちゃんの独り言】 【松ちゃんの独り言】「お金が必要ならその都度言え」

高市総理が非常に高い支持率ですね。 「昭和のおっちゃん」がますます微妙な立ち位置になる中で、夫婦間のお金のやりとりも進化していると感じます。 夫婦とは言え、元々は他人だったわけで、お互いに尊重しなくてはいけないことも多々あります。日本はいまだパワハラ体質ですが、夫婦間の問題はなかなか表面化されないので、「昭和のおっちゃん」も気がつかないまま、家族を傷つけているかと心配です。 最後に、これを言ってはおしまいな気がしますがどうですか。 「お金が必要ならその都度言え」 それでは、次回もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版