今週の松竹梅654号「その申告書は提出しても良いのか?」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅654号「その申告書は提出しても良いのか?」

配信日:2026/1/26

今シーズンの所得税確定申告シーズンの到来です。 ネット情報やAIなどで、専門家に頼らない申告も容易になりました。 しかし、果たしてその申告書は「とりあえず」提出しても良いのでしょうか? 給与や年金に医療費、ふるさと納税を申告しての還付申告、確かに簡単そうで、自分でもできそうです。 私の心配事は「当初申告要件」なのです。

【今週の松】 【今週の松】「当初申告要件とは?」

日本の税法では、所得税に限らず「当初申告要件」によるしばりが非常に多いです。
「当初申告要件」とは、「最初に」提出した申告書に記載していないと、後出しでは一切認めない、との基本ルールです。
例えば、自宅を売却した利益の3000万円控除がそうですが、売買益が3000万円以内だから「申告不要」ではありません。
申告しないとアウトでもありません。
「最初に」提出する申告書に記載があればセーフなのです。
よって、給与所得者が年末調整のみで確定申告していなければ、自宅売却の3000万円控除については、期限後の後出しでも適用可能です。
ここまで理解できれば、なにげに軽めの確定申告が大変な事態になる理由が理解できたでしょうか。

【今週の竹】 【今週の竹】「有価証券関係は当初申告要件の山!」

自宅売却は、何度もあるものではありません。 しかし、有価証券はどうでしょうか? ここ数年の株価上昇により、売買益、配当や投資信託の分配金収入も増加しているはずです。非常によくある事態が、複数の特定口座を持つ方の損益通算と損失繰越です。特定口座をA社口座で利益(源泉徴収済み)、B社口座で損失の場合、「当初申告」で損益通算しないと、後出しでは申告できなくなります。 また、損失の繰越も同様です。例えば、利益が出た年の前年が損失で無申告なら、改めて期限後に、損失の繰越の申告書を提出すれば、当年の繰越損失との通算が可能です。 このケースでも、損失が出た年に医療費などで確定申告していると、「当初申告」にならないので、損益通算と損失繰越はできなくなります。

【今週の梅】 【今週の梅】「住宅取得控除は例外中の例外?」

最後はマニアックなネタになります。 住宅取得控除についても、本来は「当初申告要件」があるので、後出しでは還付を受けられない特例です。 しかし、医療費控除やふるさと納税など、軽めの確定申告書を提出してしまい、後から申告漏れに気がついた場合は、法的には更正の請求はできないのですが、「更正の嘆願書」を提出すれば還付を受けられることがあるようです。 私の事例でも1件あります。しかし、事業所得や不動産所得などの申告者で漏れた場合は、嘆願書を出しても認められないと言われています。

【松ちゃんの独り言】 【松ちゃんの独り言】「確定申告書を提出する意味」

当初申告要件は、かなり範囲が広いので、メリットがある特典は原則後出しアウトと理解しておいてください。 とすると、「後で検討」するネタがあるなら、確定申告してはいけません。 確定申告書を自主的に提出すると言うことは、他に申告することや、特例などは使いません!と宣言することと同じなのです。 よって、確定申告依頼を受けている案件については、後出しができなくなる覚悟を持って対応しています。 それでは、次回もよろしく御願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版