今週の松竹梅第552号「小規模企業共済の解約をとことん考えてみる」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年1月16日
2024年は新NISAスタートでもあります。新NISA導入による長期的な投資資金流入が予想されてましたので、ある程度株価上昇は織り込み済みでしたが、先週は予想を超える爆上げでした。一般個人は地震で落ち込んでいるところを相場に置いてかれた感じですね。いよいよ、あの1989年12月の38915円が見えてきました。私は当時、証券会社勤務で、ディーリングルームでこの高値見てました。あれから34年、懐かしいやら感慨深いやら。
【今週の松】 「小規模企業共済を解約できるパターンは4種類」
今や安全確実で最強の節税商品は、「小規模企業共済(以下、小規模共済)」以外あり得ません。類似商品「倒産防止共済」は、入り口は良いのですが、解約すると全額課税利益です。小規模共済は、出口についても税務上有利に設計されています。小規模共済を解約できるパターンは、「共済金A」「共済金B」「準共済金」「解約手当金」の4種類です。手取りは共済金Aから順に少なくなります。4番目の「解約手当金」は任意解約や滞納による強制解約のケースです。この場合、元金割れもあるのでおすすめしません。減額(例えば月額1000円)して継続すべきです。また、「準共済金」も、65歳未満での役員退任か、個人開業医が医療法人化したため加入資格がなくなる場合で、レアケースです。「共済金A」は法人解散か、個人事業廃業の場合です。最後に、「共済金B」は、65歳以上で15年間加入などでシンプル。4種類のうち、「共済金B」パターンがもっとも現実的ですね。なお、死亡の場合は、個人事業主は「共済金A」、法人役員は「共済金B」になります。
【今週の竹】 「共済金試算例」
現時点の利率での共済金試算見積もりを見てみましょう。読者の皆さんは月額7万円が多いので、7万円で試算しました。加入15年、掛金1260万円だと共済金Bは1358万2800円、加入20年、掛金1680万円だと共済金Bは1861万1600円です。倒産防止共済は解約しても無利子ですが、小規模共済はしっかり増えてます。しかも、掛金は全額所得控除されていました。役員報酬1200万円の方は、所得税+住民税で概ね33%なので、ざっくりでも加入20年間なら、554万円節税できた上に、181万円運用益も得ることになります。
【今週の梅】 「共済金を分割受取にすると」
小規模共済の共済金Bが退職金扱いであることは、よく知られています。実は、共済金Bは、10年または15年の分割受取にすることも可能です。分割受取の共済金は、公的年金扱いの雑所得になります。また、共済金を一時受取と分割受取の2本立てにすることも可能なのです。例えば、500万円を一時受取、残りを10年分割など。最後に、分割受取にすると、10年分割で5%、15年分割だと8%さらに増えます。上記の加入20年の場合ですと、10年分割で1954万2180円、15年分割で2010万528円になります。20年加入の方が15年分割受取にすると、148万円増えることになります。節税額、運用益、分割による運用益の合計は883万円になりました!さて、読者はモヤモヤしているはずです。良い話ばかりだけで、受取時の税金は?また、他の退職金や年金とぶつかったら?ここについては次回で紹介します!お楽しみに!
【松ちゃんの独り言】 「小規模企業共済の再加入」
経営者は自身の会社とはいえ、完全引退でないのに、退職金を受け取ることは税務上簡単ではありません。それでは、65歳になったら小規模共済の共済金を受け取るのも小休止として良いかもです。しかし、ここでふと考えることは、お金が入るのは良いけど、今年から所得税も住民税も増える?ですね。であれば小規模共済を解約後、再加入するのもありです。加入資格(会社規模など)も考慮しないとできませんが。65歳で一度解約金を受け取って、2回目の解約は完全引退かまたは相続財産として考えるのはどうでしょう?ずっと長年頑張るばかりよりも楽しいような気がしませんか?
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版