今週の松竹梅第553号「小規模企業共済の出口課税を総まとめ1」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年1月22日
先週(2024年1月16日発行分)では、小規模企業共済(以下、「共済」)の出口をまとめました。この共済は、私も2005年から加入していますので、15年経過しており、65歳になったら共済金Bを受け取れる資格があります。今回は、共済の出口課税についてまとめてみました。
【今週の松】 「一括受取は退職金扱い」
もっとも多いパターンが、共済金の一括受取になりますが、この場合の税務上取り扱いは、退職所得扱いになります。退職金の場合は、所得税も住民税も源泉されますが、源泉事務と支払調書発行は共済事務局が行います。なお、退職所得控除計算の勤続年数は「共済加入年数」になります。ここで、重要なポイントですが、役員退任により共済解約した場合、「役員退職金」受取と同年に共済金も受け取るケースがあります。その場合は、退職所得控除がダブるため調整されてしまいます。少々わかりにくいかもしれませんが、共済金を先に受取り、5年後に役員退職金を受け取れば、退職所得控除をフルに使えます。
【今週の竹】 「役員退職金5年ルールを事例で!」
共済加入29年の方が、65歳で共済金Bを受取り、勤務期間40年の時に69歳で役員退職金を受け取る場合は、共済金の退職所得控除は1430万円、役員退職金の退職所得控除は本来は2200万円ですが、調整計算発動のため、2200万円ー1430万円=770万円が退職所得控除額になってしまいます。しかし、70歳で役員退職金を受け取るならば、調整計算が対象外となり、退職所得控除額を丸々引けることになります!理解すべきポイントは「退職金は5年後に!」です。
【今週の梅】 「分割受取りは公的年金と同じ扱い!」
共済金を分割で受け取る場合は、公的年金の雑所得になります。つまり、受取金額から年金控除を差し引けます。具体的には、65歳以上なら330万円まで110万円控除されます。ただし、本来の公的年金も受け取っていると、年金収入が合算されて課税されます。よって、私は現時点本来の年金を75歳まで繰り下げて、共済金を75歳までの分割受取にしようと考えています。なお、共済金は一括受取と分割受取の併用可能です。この場合、一括分は退職所得扱い、分割分は公的年金の雑所得扱いになります。
【松ちゃんの独り言】 「共済金を遺族が受け取る場合は?」
共済加入のまま亡くなった場合はどうなるのでしょう?(私はそうなる前に受け取って自分で使いたいのですが)とすると、遺族が共済金を受け取ることになり、死亡退職金になるので、みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。その他、65歳になる前に解約すると、一時所得扱いになります。どうでしょう?小規模企業共済は、入口も出口も最強の金融商品であることは間違いありません。頑張って、65歳になるまで15年間加入しましょう。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版