今週の松竹梅第560号「課税されるかどうかが明確ではない?個人事業税①」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年3月11日
これまで税に関するさまざまなトピックを取り上げてますが、初めて「個人事業税」を取り上げます。個人事業税とは、文字通り、個人事業を課税対象としています。ただし、申告課税ではなく、提出された確定申告書から都道府県の判断で納税通知書を送ってきます。固定資産税や自動車税などと同じく賦課課税方式なので、税理士はあまり詳しくありません。とは言え、ある日突然(東京都は毎年8月1日付け)通知書が届くとドキドキします。今回と次回は、個人事業税を巡る「なんじゃこりゃ!」「なんで?」を紹介します。
【今週の松】 「個人事業税は限定業種!」
まず、個人事業税の仕組みをざっくりと紹介します。個人事業税は、個人事業すべてが課税対象ではなく、課税対象は70業種に限定されてます。よって、その70業種に該当しなければ、課税されません。ただし、業種を認定する判断は自治体が行うので、そのため妙な事態が勃発しています。私は「税理士業」として思いっきり該当します。ズバリの業種もあれば、「周旋業」「代理業」「案内業」「請負業」などと、曖昧でイメージが湧かないものもあります。トラブルはこのあたりから発生します。
【今週の竹】 「税率は5%」
個人事業税の税率は所得に対してほぼ5%です。畜産業など特殊な5事業については4%、または3%です。所得が発生すれば、いきなり税額が発生するわけではなく、「事業主控除」290万円を差し引きます。事業主控除があるので、青色申告特別控除は適用されません。なお、事業主控除は月割り計算です。
【今週の梅】 「不動産貸付業は規模により課税?」
不動産貸付業も事業税課税対象業種です。しかし、不動産貸付業の場合は、規模により対応が変わるようです。多くの自治体では、所得税法通達の「5棟10室」以上だと課税対象にしています。自治体によっては、賃貸建物の床面積が600平方メートル以上、また、賃貸収入が1000万円以上など、独自の基準もあるとのことです。いずれにしても、申告者側から、この基準に達しました!と伝えるわけではないので、規模的には達成していても課税通知が来なかったり、逆に、来ないので安心していたら、ある年から課税通知が届き始めた事例もあります。次回は、ITフリーランスや保険外交員に対する驚きの事業税課税を紹介します。
【松ちゃんの独り言】 「個人事業主の重税感」
確定申告で個人事業主の申告書を作成していると、たまに個人事業ってきついな~、と思うことがあります。昔は、「なんでも経費にしてるんでしょ」などと言われてましたが、税法上必要経費はそれほど計上できません。一方で所得税率上限は45%、その他に住民税10%、事業税5%、さらには、消費税10%、店舗不動産を持てば固定資産税が加わります。一昔前は、脱サラ(わかるかな?)して開業して、夢を実現した方がチラホラいた気がしますが、夢のコストは年々重たくなってるような気がします。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版