今週の松竹梅第566号「暦年贈与と相続時精算課税をまとめて理解する④」

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今週の松竹梅第566号「暦年贈与と相続時精算課税をまとめて理解する④」

配信日:2024年4月22日

日本の国税当局は、近年「国際課税」にかなり注力しています。 国外財産が5000万円超えると提出しなければいけない「国外財産調書」もその一つですが、あるセミナーでこの調書に関してヒヤッとする事例を聞きました。この続きは独り言で。 今週は、暦年贈与と相続時精算課税制度についての最終回です。

【今週の松】 「相続時精算課税は贈与時の価額で固定」

相続時精算課税制度は2024年から110万円基礎控除ができたため、現金贈与でも使う局面が増えることになります。
ただし、この制度を使うのは、同族株や投資不動産の贈与で、本来のパワーを発揮します。
理由は、相続時精算課税で贈与した場合は、与時の価額で固定されるためです。
たとえば、業績が好調の法人同族株を1株100万円でオーナー代表者が長男に贈与したとします。オーナー代表者に相続発生で、この同族株がその時点で、1株1000万円だったとしても、贈与時の100万円評価で相続税を計算することになります。

【今週の竹】 「2名から贈与された場合の110万円控除は?」

暦年課税の110万円控除は、贈与された側での110万円控除なので、当然2名から110万円ずつもらうと、220万円-110万円=110万円は贈与税がかかります。では相続時精算課税を使って2名から110万円ずつもらうとどうなるでしょうか?例えば、祖父から110万円、祖母からも110万円もらうと、基礎控除は按分して、それぞれ55万円ずつ差し引いて申告しなければいけません。なぜなら祖父と祖母の相続発生時に基礎控除差引後の贈与財産を加算して相続税計算する必要があるからです。突然ややこしくなりましたね。このあたり勘違いする方が多いかもしません。 .

【今週の梅】 「220万円非課税で贈与する方法」

相続時精算課税の110万円基礎控除と暦年贈与の110万円基礎控除は別枠です。 よって、祖父からは相続時精算課税で、父から暦年贈与でそれぞれ110万円ずつ贈与を受ける場合はそれぞれ非課税範囲内になります。 ただし、何度も念押しですが、110万円基礎控除スタートでも、「相続時精算課税を使ったつもり」ならば、「絶対に」相続時精算課税選択届出書を「期限内に」提出しなければいけません。 以上、暦年課税と相続時精算課税について基本事項を説明しました。 後日改めて、相続時精算課税の応用編を紹介しますね。

【松ちゃんの独り言】 「国税当局は海外口座を把握している?」

セミナーで聞いた事例です。「国外財産調書」を提出後、しばらくして顧問税理士に税務署から電話があり、「抜けている口座はありませんか?」本人に確認すると、いやいや、全部記載してますよ。」数日後、「先生、思い出しました!数万円残ってる口座がありました!」担当税理士がその旨を税務署側に伝えると、そのまま何事も無くやりとり終了。 と言うか、この事例怖くありませんか? CRS(外国との情報交換制度)で、日本人の海外口座情報が蓄積されていることは知ってますが、付け合わせ作業をしっかりやっているんですね。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版