今週の松竹梅第573号「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例は使えるのか?①」

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今週の松竹梅第573号「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例は使えるのか?①」

配信日:2024年6月17日

相続税に少しでも関心があれば、「自宅の土地は相続税が安くなる」と聞いたことがあるかと思います。「小規模宅地の特例」を使えるかどうかは、相続税節税の柱です。小規模宅地の特例は、非常に複雑な上に、税制改正が度重なり、一般の方では、正確に理解して使いこなすことはかなり難しいです。この「自宅」ですが、老人ホームに入居後でも「自宅」扱いにできるのでしょうか?今回から、老人ホーム入居と小規模宅地特例適用について現行ルールを解説します。このルールを理解すれば、老後の人生設計が変わるかもしれません。

【今週の松】 「居住用宅地に該当すれば80%引き!」

まず、小規模宅地特例の「居住用宅地」に該当するとどうなるか?を説明します。自宅敷地の330平方メートルまでとの面積制限がありますが、この面積なら、通常規模の自宅なら面積制限内ですね。該当すれば、本来の相続税評価額から、なんと!80%差し引いて申告できます。そもそも相続税評価(路線価)は、時価の8割を目安にしていますので、理論的には、時価の16%評価で申告できることになります。これが使えるかどうかで、相続税総額はかなりの差が付きますね。

【今週の竹】 「老人ホーム入居後でも自宅扱いに!」

まず結論からですが、いわゆる老人ホーム入居後でも元の自宅を自宅扱いにして特例適用が可能です。ただし、要件が2点だけあります。・相続発生時に要介護か要支援認定を受けていること・入居後に元の自宅を貸し付けたり、他の親族が新たに住んでいないことこの2点が意外と奥が深いのです。なお、ホーム入居は、所有権や終身利用権を取得していても大丈夫です。この点は、2014年相続から認められています。

【今週の梅】 「ホーム入居後の要介護認定でも特例は使える!」

老人施設が多様化している現在、まあまあありそうな想定ですが、要介護認定を受けていない、つまり、まだ健康な状態で有料老人ホームに入居した場合は特例はアウトなんでしょうか? 上記の要件を見ると、「相続発生時に」とあります。 つまり、「元気な状態」で老人ホームに入居したとしても、その後、要介護認定を受けてから亡くなった場合であれば、特例が使えることになります。 さらに、要介護申請中に亡くなった場合でも、要介護認定は、申請日に遡って認定されるため、やはり特例が使えます。

【松ちゃんの独り言】 「終の棲家の選択肢」

今回は、老人ホーム入居後でも、小規模宅地特例が使えることを解説しました。 2014年税制改正は、特例が使えなくなるため「老人ホーム入居をためらっている」 事例に配慮しての改正でした。 「自宅で死ぬか?病院で死ぬか?」は、しばしば問われるテーマですが、今や老人ホームは、施設も多種多様で、終の棲家の有力な選択肢です。 老人ホームに入居しても、大きな特例が使えると知れば、老後の人生設計がやりやすくなるかもしれません。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版