今週の松竹梅第575号「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例は使えるのか?③」

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今週の松竹梅第575号「老人ホーム入居後でも小規模宅地特例は使えるのか?③」

配信日:2024年7月1日

先週、先々週と、老人ホーム入居後でも、もとの自宅を「自宅」として、相続税の小規模宅地特例が使えることを説明しました。 このことは、税理士の私が知っていても、当事者である読者の皆様が知らなければ、先週紹介した「やってはいけないこと」をやってしまう可能性があります。 そこで、今回は、実際に数値を当てはめて、特例の有無でどれくらいの影響があるか、事例を作ってみました。

【今週の松】 「特例なしの相続税額」

登場人物は、父(すでに死亡)、母(昨年から有料老人ホームに入居)、子1名(賃貸住宅に別居)とします。実家は東京都内の戸建てで、建物の固定資産税評価は1000万円、土地の路線価評価は9000万円、その他の財産は預金を含めて1億円の合計2億円。都内だと、財産総額としては、中の上クラスでしょうか。この状況で、相続発生した場合の相続税額は、課税財産が2億円ー基礎控除3600万円=1億6400万円
1億6400万円×40%ー1700万円=4860万円
4860万円と、自宅以外の財産の半分近くもの税額になりました。

【今週の竹】 「特例ありの相続税額」

もしも実家敷地で小規模宅地特例を使えれば、実家敷地の9000万円は、8割引きの1800万円評価になります。とすると、課税財産は、2億円ー7200万円ー3600万円=9200万円税額は、9200万円×30%ー700万円=2060万円なんと、特例が使えるかどうかで、2800万円も安くなりました!半分以下ですね。

【今週の梅】 「やってはいけないこと」

税額で検証したところで、再度「やってはいけないこと」を説明します。 事例の子は、別居で賃貸住宅に住んでいます。 この特例を知らない場合、こう考えるのではないでしょうか? 「実家は都内の良い場所だし、空いてるならもったいないから賃貸して家賃を稼ごう」 または、 「今のアパートより実家の方が広いから、実家に引っ越そう。家賃もなくなるし」 残念ながら、どちらも特例は使えなくなります。 子が、「母が老人ホーム入居前から」もともと実家に住んでいる場合ならば、小規模宅地特例が使えます。

【松ちゃんの独り言】 「数値に置き換えればスイッチが入るのか?」

先週、先々週と文章のみだと、おそらくピンとこない方がほとんどでしょう。 しかし、今回のように簡単な事例で数値化すると、真剣に考えるきっかけになるのではないでしょうか。 相続税のみならず、M&Aなど事業承継や事業計画その他、数値化によって、イメージが具体的になります。 数値化が苦手な方が非常に多い印象があります。 数値化はそれほど難しくありません。 面倒がらずに、なんでも「数値化」してください!
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版