今週の松竹梅第576号「後継者を役員にしておかないと事業承継税制が使えない?」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第576号「後継者を役員にしておかないと事業承継税制が使えない?」

配信日:2024年7月8日

先週は、約20年に一度の大イベント、「新紙幣発行」でした。新紙幣発行は景気にプラスなのか、日経平均株価も4万円を超えて新高値になりました。日銀統計によると、流通している現金残高は、120〜130兆円とのことです。個人的に気になるのが「タンス預金」ですが、試算では流通現金の50%前後がタンス預金と言われているので、50~70兆円もの現金が自宅のどこかにある?この新紙幣発行で、このタンス預金はどうなるのでしょうか? 金や仮想通貨ですかね?

【今週の松】 「特例事業承継税制」

あまり私のメルマガでは取り上げてきませんでしたが、特例事業承継税制について、「ある」タイムリミットが年内限りになりました。話を元に戻しますと、特例事業承継税制とは、ざっくり言うと、「オーナー経営者から後継社長が贈与または相続で株を取得した場合に 贈与税または相続税の全額を猶予できる制度」です。制度利用に係るハードルが高いため、あまり一般的に使われておらず、利用件数は伸びていないようです。とは言え、高い株価に悩むオーナー経営者にとっては、知っておいた方が良い制度です。

【今週の竹】 「特例事業承継税制の期限」

特例事業承継税制には、3つの期限があります。まず、この制度が使えるのは、2027年12月31日までの贈与または相続で株を取得した経営者が対象です。その前提として、2026年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出しておく必要があります。この特例承継計画の提出期限は、税制改正で再々延長されました。ところが、肝心の特例制度そのものの2027年末期限については、一度も延長されていないばかりか、「延長しない」方針コメントが繰り返し発表されています。

【今週の梅】 「後継者の役員要件に注意!」

実は、贈与の場合の後継者役員要件には要注意です。 具体的には、「後継者は贈与の日までに引き続き3年以上役員であること」 とあります。このまま、特例事業承継税制が延長されないとすると、2024年12月31日までに、後継者候補を役員にしておかないと、この制度を贈与で使うことが、ほぼ不可能になります。 もしも、選択肢の一つとして、特例事業承継税制を検討する可能性があるなら、「今年中に」後継者候補を役員にしておくことが必須です。 この3年以上役員要件については、年数についての改正が入る可能性がありますので、今後の動向に要注意です。

【松ちゃんの独り言】 「一人暮らし世帯が過去最多」

厚生労働省によると、一人暮らし世帯が昨年6月時点で1849万世帯と、全体の34%になり過去最多とのことです。 このうち、一人暮らし高齢者は855万人ですが、この統計で言う「高齢者」は65歳以上だそうです。逆に64歳以下の一人暮らしが1000万人もいるのか! と少々驚きですね。 日本では生涯未婚率が増加し続けているので、生活が豊かな「お一人様」も増えているようです。 お一人様は、普段は問題無いのですが、病気や事故、大きな契約、相続関係など「有事」に弱いので、本人確認の仕組みをデジタル化していただきたいですね。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版