今週の松竹梅第579号「改正電子帳簿保存法~結局どうすれば良いのか?~」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第579号「改正電子帳簿保存法~結局どうすれば良いのか?~」

配信日:2024年7月29日

昨年10月1日スタートのインボイス制度運用、今年6月からの定額減税、加えて改正電子帳簿保存法対応と、経理事務担当者にとって受難の日々が続いてます。特に、電子帳簿保存法(以下、電帳法)対応がもっとも悩ましいかもしれません。たびたび改正されており、国税庁サイトのQ&Aも頻繁に変更されてます。とは言え、改正電帳法は今年1月1日から運用スタートしています。そこで、今回は、電帳法対応の目的を明確にした上で、結局、どうすれば良いのか?について述べてみることとします。

【今週の松】 「電帳法対応の目的はシステム通りの運用ではない!」

国税当局の電帳法対応窓口では、国税当局内部からの問い合わせと、法人事務担当者や税理士からの問い合わせの内容に、かなりギャップがあるとのことです。国税当局内部からの問い合わせは、税務調査現場からの具体的問い合わせで、まとめると、システムが複雑で調査による証拠として認めて良いのか?です。一方で、外部からの問い合わせは、この方法、またはこのシステムで電帳法対応したことになるのか?とのことで、経理現場の不安がうかがわれますね。経理事務担当者は、必死に電帳法対応を模索してますが、本来の目的は、「税務調査対応が可能か?」です。複雑なシステムルールにこだわって運用すると、調査現場で、データ照合に非常に手間がかかり、かえってトラブルになる可能性があります。

【今週の竹】 「最新の緩和を含めた電子取引データ対応」

基本的な話題になりますが、そもそも電帳法は「スキャナデータ保存」「電子取引データ保存」「電子帳簿保存」の3種類に分類されています。このうちもっとも重要なのは、「電子取引データ」ですね。つまり、メールその他で受け取った取引情報を、どう保存するか?です。ここについては、タイムスタンプや改ざん・削除ができないシステム運用のどちらかが必要とされてましたが、「社内の事務処理規定」があり、規定通り運用されていればOKとの選択肢が追加されています。しかも、国税庁サイトに「事務処理規定」のひな形がダウンロード可能です。とは言え、データ保存は義務です。検索しやすいよう「日付、取引先、金額、取引番号」などをエクセルで検索簿を作成しておくのもありです。国税庁サイトで、この検索簿ファイルもダウンロード可能です。社内的に対応が難しい場合は、電子取引データを「破棄しない」ことが大前提ですが、①2期前の売上高が5000万円以下、②電子取引データを印刷して日付、取引先ごとに提示できる状態、のどちらかに該当すれば、検索機能は不要とのことです。会社規模により、以上の緩和措置で、かなり現実対応が可能ではないでしょうか。

【今週の梅】 「意外と厳しいスキャナデータ対応」

電子取引データの取扱いについては、続々と緩和措置が出ており、国税当局の現実対応として、インボイス制度に似たような展開となっています。 ところが、スキャナデータについては、従来通り変更ありません。 スキャナデータとは、電子取引データとは逆に、紙で受け取った請求書や領収書などをスキャンして保存したデータです。 とすると、スキャン後に原本を破棄して良いか?との要望になりますが、現状では相当厳しい要件がありますので、破棄はほぼ不可能です。 結局、紙で受け取った請求書等については、スキャナデータを作成してもしなくても、税務調査時には、原本提示が原則になります。

【松ちゃんの独り言】 「結局、どうすれば良いのか?」

検索機能不要になる要件については、すでに説明しました。 もう一方の悩みの種「改ざん・削除の防止」についても、「相当の理由がある場合」かつ、税務調査の際にデータのダウンロードが可能で、出力書面の提示があれば、この要件も不要とされました。 結局のところ、電帳法対応は以下の通りと考えてもよさそうです。
①     電子データを破棄してはいけない
②     電子データは出力して、提示、提出できるようにしておく
③     電子データは、②をPDFなどにより保存して、ダウンロードできるようにしておく
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版