今週の松竹梅第584号「不動産購入直後の贈与はセーフか?」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第584号「不動産購入直後の贈与はセーフか?」

配信日:2024年9月9日

このメルマガでは、これまで贈与を何度か取り上げてきましたが、簡単に理解していただくために、現金贈与を前提にしていました。今回は、贈与効果が大きくなる「不動産贈与」を取り上げます。

【今週の松】 「不動産贈与は原則として相続税評価」

不動産を贈与する場合は、原則として「相続税評価」の価額を贈与財産として評価します。具体的には、土地については「路線価評価」、建物については「固定資産税評価」です。一般的な傾向として、鉄筋コンクリート造マンションの場合、時価と相続税評価が大幅に乖離します。私の感覚ですと、マンションの相続税評価は、購入金額の3割から4割程度のものが多いです。例えば、9000万円で購入したマンションが、1/3評価なら3000万円です。親子間で、9000万円の現金贈与を行った場合、贈与税は4249万円ですが、評価3000万円のマンションなら1035万円です。税額で3214万円もの差が付きました。

【今週の竹】 「購入直後の贈与はセーフか?」

不動産贈与の「相続税評価」のパワーを原則的に説明しました。とすると、親がマンション購入して、直後に子に贈与すると節税になるのでは?と考えますね。このスキームを明確にアウトにするルールはありませんが、相続税業界で恐れられている「総則6項」なる曖昧な通達が存在します。原文は法律でなく「財産評価基本通達6」として、「この通達の定めによって評価することが 著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」と非常に短く簡潔な文章ですが、何が何だかわかりませんね。翻訳すると、あまりにも節税効果ありすぎると認めないよ!との意味です。

【今週の梅】 「購入直後の贈与否認例」

この総則6項による否認例は、相続税ではしばしば話題になりますが、贈与税でも最近の事例があります。内容としては、2017年11月に8億7000万円購入して、その5ヶ月後に子に贈与、その4年後に調査通知があり、実地調査前に自主修正申告して調査終了との微妙な内容です。事例を読む側としては、税務当局が調査でどう計算したか知りたい場面です。この事例は調査通知段階で「総則6項を適用する可能性」を通知とのことでした。しかも、調査が4年後と、異様に遅いタイミングです。国税側の意図としては「注意喚起」の事例と解釈しています。

【松ちゃんの独り言】 「結論として、不動産贈与はセーフ?」

結局、購入直後の不動産贈与がセーフかどうか、モヤモヤしましたね。個人的には、多少の条件付きになりますが、セーフだと考えています。条件としては、①銀行融資をからめないこと、②購入とほぼ同時の贈与は避けたい、③贈与直後の売却も避けたい、④大きな金額ではない、この4条件が揃っていれば、まあまあ大丈夫かなと考えています。親側の年齢によっては、相続時精算課税で贈与すべきです。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版