今週の松竹梅第589号「口座から出金した現金は誰のものか?」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年10月15日
年々相続税関係業務が増えていますが、悩ましいのが預金口座の出入り調査です。税務署は、被相続人口座からの出金を厳しくチェックしています。以前は3年分くらいと言われてましたが、生前贈与加算が3年から7年になったため、今後は5年から7年、富裕層の資産家なら10年分くらいは確認しておく必要があります。
【今週の松】 「出金が相続税対策?」
被相続人の預金口座を確認すると、亡くなる数年前から50万円単位でかなりの回数の出金があることがあります。この場合、ほぼ出金するのは相続人で、現金のまま家の中にあることが多いです。中には数千万を家に保管している方もいました。この現金は「当然に」被相続人の相続財産なのですが、口座残高にはないのだから申告したくない!と頑張る方もいます。もしも亡くなる直前の出金ではなく、数十年かけて少しずつ「現金」を保管し続けた場合は、税務署側も私もチェック不能かもしれません。しかし、ある意味「使えないお金」ですし、防犯上も危険ですから絶対やめて欲しい行為です。
【今週の竹】 「使ってしまってない?」
口座から出金された資金がどこにもなく、相続人も全員わからないと主張したらどうなるのか?と相談されることがあります。以前、高齢の経営者から、ラスベガスに行ってギャンブルで負けてなくなった、と言えばどうかな?と相談されたことがあります(苦笑)。その時は、ラスベガス渡航記録とか、もともとギャンブルが好きだったかどうか相続人が厳しく調べられますよ、と言って諦めていただきました。別件ですが、高齢ながら現役の医師の相続案件で、妙に口座残高が少ないので、奥様に確認したところ、この部屋よく見てよ!と言われました。部屋には、世界中をクルーズ客船で旅行した写真と飾り物が並んでいました。「なるほど使っちゃいましたか!」と私。個人的には、私はこちらを目指しています。
【今週の梅】 「贈与になっていない名義預金」
少々笑える事例を紹介しましたが、少しも笑えないのが名義預金です。名義預金とは、贈与したつもりで贈与が成立していない預金なので、そもそも時効も成立していません。よって、金額が大きくなりやすく、よかれと思って「手元で管理」しておいた家族名義の通帳がまったく意味をなさなくなります。こうなると、税理士としても説得が難しく悩ましい事態です。もしも名義預金の可能性がある口座を手元で管理しているなら、できるだけ早く対策すべきです。
【松ちゃんの独り言】 「年々立証責任が厳しく問われている?」
今回は、少々怖い話題でしたので、ややホッとする話題(?)も紹介します。令和に入ってからの名義預金事例で、従来ならば明らかに被相続人から出た資金と思われる現金や家族名義預金を1億近く更正処分された後、相続人側が不服申し立てしたところ、なんと、全額処分取り消しになったとのこと。税務の常識から考えると、驚きの裁決事例なのですが、国税当局側が「証明できなかったため」が理由でした。つまり、国税当局側の立証責任も厳しく問われる時代が到来したようです。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版