今週の松竹梅第590号「死亡保険金と死亡退職金の非課税枠はガラ空き?」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第590号「死亡保険金と死亡退職金の非課税枠はガラ空き?」

配信日:2024年10月21日

相続税申告書に記載される財産には民法上の相続財産の他に、「みなし相続財産」として「死亡保険金」や「死亡退職金」も含まれます。この2種のみなし相続財産には、相続人1名あたり500万円の非課税枠があることは知られています。しかし、現実の申告では、「意外と」この非課税枠は使われていません。贈与の前に、まず非課税枠を使う検討をおすすめします!

【今週の松】 「非課税枠を使い切った申告はわずか15%」

生命保険は、現役世代のうちは積極的に加入していますが、満期保険金をそのまま受け取ったり、途中解約前提の定期保険だったりで、非課税枠が空いた状態で相続発生を迎える方が多いです。ここ数年提出した相続税申告書20件を確認したところ、生命保険非課税枠を使い切っている申告は3件でした。10件は受取保険金そのものが0でした。非課税枠狙いの生命保険は、高齢者でも加入可能なものがあるので、このメルマガを読んだ方は、すぐ検討してください。

【今週の竹】 「ガラ空きの死亡退職金非課税枠」

死亡退職金も、受取生命保険金と同額の非課税枠があります。しかし、20件中この枠を使っている申告は1件でした。使い切ってはいませんでしたが。ただし、相続税対策として死亡退職金を受け取れる方は、同族法人役員でないと難しそうです。非課税枠を使っている件数が少ないのも当然かもしれません。

【今週の梅】 「小規模企業共済なら死亡退職金になる」

実は、20件中1件は、同族法人役員ではありません。不動産賃貸業の方で、「小規模企業共済」加入者でした。皆さんご存じのように、小規模企業共済は、所得税、住民税の節税商品として圧倒的なパワーがありますが、解約時の出口である共済金は退職所得になります。よって、解約しないまま相続発生した場合は、相続人が受け取る死亡退職金扱いになるため、ガラ空きの死亡退職金非課税枠を使うことが可能です。小規模企業共済加入は年齢制限はありません。不動産貸付業は高齢者が多いので、誰でもいつでもできる相続税対策になります。ただし、貸付不動産の規模は事業的規模(5棟10室)が必要です。

【松ちゃんの独り言】 「非課税枠を使い切るおすすめ」

今回は、贈与の前に非課税枠を使い切る検討をおすすめしました。20件の相続税申告は、ほぼいわゆる飛び込み案件で、特段の対策をしていない状況でした。私も開業25年になりますので、お客様も私と一緒に年を重ねております。贈与のやり方についての相談は年中ありますが、非課税枠を使い切る対策からおすすめしようと考えています。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版