今週の松竹梅第591号「遺留分をざっくり理解する!」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第591号「遺留分をざっくり理解する!」

配信日:2024年10月28日

「相続」を考えると、悩ましいのが「遺留分」です。遺留分とは、法定相続人に保証された財産取得分のことです。対象者は、配偶者と、子や親などの直系である法定相続人で、兄弟姉妹は対象外です。→ここ重要今回は、「なんとなく」わかったつもりの遺留分について、基本事項をまとめました。

【今週の松】 「遺留分の割合」

遺留分の割合は、基本的には法定相続分の1/2ですが、親のみの場合は1/3、配偶者と親が相続人の場合は、配偶者が1/3、親が1/6になります。実際に遺留分の争いになるのは、配偶者と子が複数のケースです。遺言書では、概ね配偶者や同居の子に財産が集中する傾向があるので、別居の子が遺留分侵害請求を訴えてくることが多くなります。

【今週の竹】 「遺留分の時効は?」

遺留分は「権利」なので、請求しなければ、消滅します。その時効(期間制限)は、遺留分の侵害を知った時から1年、または、相続開始から10年とされています。「遺留分の侵害を知った時」とは、遺言書が存在して、その内容が自分の遺留分に満たないことを知った時などです。このタイミングは証明が難しい事例もあり、争いになると時効が進行したのかどうか微妙になる場合もありますね。なお、「相続開始から10年」については、単純に死亡から10年であり、死亡を知らなかった、または自分が相続人であることを知らなかったとしても、10年で遺留分は消滅します。

【今週の梅】 「生前贈与も遺留分の対象になる?」

遺留分侵害請求案件だと、相続財産だけでなく生前贈与分も対象になるケースがあります。民法によると、「相続開始前1年間の生前贈与」「法定相続人に対する相続開始前10年以内の生前贈与」が遺留分侵害請求対象になります。さらに、「遺留分侵害と知って行われた生前贈与」や、多額の生命保険金も「特別受益」として、遺留分侵害請求の対象となり得ます。こうなると、対象になるかどうかで、何年もの争いになり親族間の人間関係は完全に崩壊しますね。

【松ちゃんの独り言】 「子供がいない夫婦の遺言書は必須」

私は税理士なので、遺留分侵害請求事件を業務として受けることはありませんが、遺言書の書き方や生前の家族会議でなんとかなったのでは、と思うこともしばしばあります。一方、兄弟姉妹については、法定相続人でも遺留分がありません。つまり、子供がいない夫婦の場合、遺言書ですべての財産を「配偶者に取得させる」と書いておけば、法的には何の問題もないことになります。ところが、実際は遺言書を書いていない方が多いです。遺言なしで、子供がいない老夫婦に相続発生すると、残された配偶者は、自宅に住めなくなったり、日々の生活ができなくなるケースもありえます。子供がいない夫婦の夫が遺言書を作成しておくのは、最低限の義務だと私は考えています。
 それでは、次回もよろしくお願いします。

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版