今週の松竹梅第605号「税務署は何を知っていて何を知らないのか?①」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第605号「税務署は何を知っていて何を知らないのか?①」

配信日:2025年2月3日

2月になりました。所得税・贈与税・個人消費税の申告シーズン到来です。実際に質問相談が多いのは「贈与税」です。おそらくネット上のさまざまな記事で「贈与税の課税対象になるかも?」とのタイトル記事が多いためですね。贈与税がかかるかどうかの判断には、どんな情報が税務署に届いているのか?を知ることが大事です。今回以降、税務署が「何を知っているのか?」をまとめました。

【今週の松】 「口座間の資金移動は通常ノーマーク」

まず皆さんがもっとも気にする親族間の「口座間資金移動」について。断言しますが、税務署は、資金移動時点はノーアクションです。親から子に500万円移動したからと、自動的に銀行から税務署に報告するシステムはありません。何か調べる理由が発生した時点で口座を確認することはあります。その理由を知っていれば、無駄に税務署を恐れる必要はありません。

【今週の竹】 「海外送金や海外入金は要注意」

口座間の資金移動はノーマークですが、海外送金や入金は要注意です。銀行には「国際送金等調書」を税務署に提出する義務があります。その提出ルールは、個人・法人を問わず、1回100万円超の送金または入金で、内容は、送金人・受取人の氏名、住所、金額、相手方銀行、送金または入金の理由とかなり詳細です。「理由」も怖いですね。また、銀行の提出先ですが、なんと、銀行の本店所在地の所轄税務署にその銀行のすべての支店分をまとめて報告することになっています。タイミングは、法定調書の合計表と同じく、1年分を翌年1月末までに提出します。提出された税務署は住所地を元に税務署ごとに振り分けて情報共有するとのことです。

【今週の梅】 「不動産購入のお尋ねへの対応」

不動産の購入や売却があった場合、法務局から「自動的に」所轄税務署に登記変更事由が報告される仕組みになっています。よって、購入者については、購入資金の出どころについて「お尋ね」が届くことがあります。このお尋ね発送基準は公表されていません。一般的には、「高額物件なのに購入者が低所得」「ローンなし一括購入」「購入前に海外入金がある」などに該当すると届くようです。私は、お尋ねは、1回目は無視でも構わないと考えています。2回目が届いたら、税務調査のきっかけになりやすいので、しっかり対応した方が良いですね。

【松ちゃんの独り言】 「敵」

筒井康隆原作の映画「敵」を観てきました。この映画は仏文学権威の元大学教授が一人暮らしの老人となって、静かな生活から次第に妄想なのか現実なのか混沌とする恐ろしい映画です。なお、昨年秋の東京映画祭グランプリ作品です。映画は、当初は老人の日常を淡々と描きますが、若い女性に誘われたり、教え子の女性が訪ねてきたり、死んだはずの妻から執拗に嫌味を言われたり。そうこうするうちに、PC上の「敵が攻めてくる」との書き込みをが現実となったと思い込んでしまいます。原作の筒井康隆氏が64歳で書いた作品ですが、「年を取ることの恐怖を書いた」とのこと。老人の生活をここまで詳細に描いた映画は初めてかもしれません。
 それでは、次回もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版