今週の松竹梅第627号「調査官はなぜ決定処分を嫌うのか?」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第627号「調査官はなぜ決定処分を嫌うのか?」

配信日:2025年7月14日

こんにちは。 松本事務所メルマガ「今週の松竹梅」第627号を配信します。 先週、万博会場に入場してきました。海外パビリオン中心に観ましたが、近年の万博のような世界遺産、自然景観、特産物、災害や貧困の紹介ではなく、多くの国で、先進国並みの科学技術、新しい産業、未来都市計画の展示が目立ちました。 そう言えば、この万博のテーマが「いのち輝く未来社会のデザイン」でした。 ハードとしての文明はかなり発展してきましたが、文明=幸せとはいえません。 それぞれの個人が、生き方を選択することが幸せにつながると感じました。 日本館の展示は「循環」がテーマでした。実に興味深い展示でしたが、国民に共感を持って浸透するかどうかはこれからですね。

【今週の松】 【今週の松】「修正申告と決定処分」

今回は、税務署による法人税務調査の終結が修正申告なのか決定処分なのかについてです。
修正申告は、調査官に否認事項を指摘されて、法人側が「自主的に」修正申告書を提出するパターンです。決定処分は、否認事項指摘を法人側が受け入れず、税務署側が処分して課税するパターンです。
税務署調査では、ほぼ決定処分はなく、修正申告で終結するのが「常識」です。
この理由を知っていると、調査後半での交渉が有利になります。

【今週の竹】 【今週の竹】「調査官は決定処分を非常に嫌う」

調査官は決定処分を非常に嫌います。この理由は、署内手続きがかなり煩雑になるためです。 加えて、決定処分の場合は、その理由を文書で通知する義務があるのですが、「理由」を書くことは難しいので、税務署側はここでも決定処分を嫌います。 調査官は、否認指摘にもかかわらず、法人側が修正申告を受け入れないと決定処分の検討になるため、上司(統括官)にも注意されます。 税務調査の終結として、否認指摘を認めて自主的な修正申告を取れるかどうかは、調査官の人事評価にも影響するのです。

【今週の梅】 【今週の梅】「決定処分を交渉に使う」

以上、税務署側が決定処分を非常に嫌うことを知っていれば、交渉を有利に持ち込むことが可能です。 例えば、「社長はこの否認指摘をまったく認めていない」ものの、多少「おまけ」してくれれば、社長を説得します、または、「社長は非常に憤慨しており、修正は絶対出さないから決定しろとのことです」などと伝えると、それまでより有利な状況になることが多いです。 もちろん、否認指摘が明確なミスではなく、グレーな事項に限りですが。

【松ちゃんの独り言】 【松ちゃんの独り言】「国宝」

歌舞伎を題材にした3時間もの実写映画にもかかわらず異例の大ヒットを続ける映画「国宝」を観てきました。 率直な感想ですが、映像がリアルで緊張感のある場面が続き、3時間があっという間です。この映画はまさに監督の映画です。 監督は「フラガール」や「悪人」「怒り」の李相日監督。 この映画では歌舞伎の演目やしきたり、見方などをナレーションや説明的なセリフなしで映像表現しており、しかも観客にしっかり伝わっています。どんな題材でも監督の力量で面白くなるお手本のような映画です。 それでは、次回もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版