今週の松竹梅第594号「会計検査院が自社株評価について指摘?」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】
配信日:2024年11月18日
今月11月6日に毎年恒例の会計検査院報告書が発表されました。「概要」だけでも695ページあります(笑)。この中で、「取引相場のない株式の相続税評価について」との指摘がありました。「取引相場のない株式」とは、いわゆる皆さんが経営する会社の自社株ですね。今回のメルマガでは、この指摘が意味するものを解説します。
【今週の松】 「基本通達通りの株価が低すぎる?」
報告書の前半は、相続税評価基本通達による株価評価、つまり税法によるルールの解説を延々と解説しています。後半は、税法ルールの株価のうち、類似業種比準株価と配当還元評価による株価が「安すぎる!」と厳しく指摘しています。配当還元評価は少数株主の場合の特例ですが、「節税のため」不自然に配当還元評価を適用している事例が多いとのこと。今回は配当還元評価ではなく、一般的に使う「類似業種比準株価」に話題を絞ります。
【今週の竹】 「類似業種比準株価は純資産価額の27.2%?」
基本通達で「大会社」に分類されると、100%類似業種比準株価で評価できます。会計検査院によると、類似業種比準株価は純資産価額の27.2%でした。(なお、この統計値は平均値ではなく中央値です)大会社分類はややハードル高いのですが、中会社の上でも90%は類似業種比準株価で評価できます。「中会社の上」は、業種が卸売業なら、純資産4億円以上、かつ 売上7億円以上なら可能です。個人的には、純資産価額は解散価値なので、これでも安いと考えていますが、その27.2%で評価されるのであれば、会社経営しているだけで相続税対策になり得ますね。会計検査院は、その点を「不公平」と指摘しています。タワマン課税強化と同じように、その対策が「できる人とできない人の差」を、国が不公平だと考えていることは理解した方が良いと思います。
【今週の梅】 「会計検査院指摘は税制改正につながる」
今回の会計検査院指摘が意味するものは明確です。不公平を是正する税制改正が近い、つまり類似業種比準株価が高くなります。よって、今できること、自社の株主と株価を確認して、 株主異動を行うべきタイミングを考える必要があります。現実は、経営者は日々の経営で頭がいっぱいなので、大多数の経営者はなにもしないでしょう。気になる方は、松本に相談してください。
【松ちゃんの独り言】 「会計検査院の指摘と税制改正の関係」
よく言われる、「会計検査院が指摘すると税制改正がある」のは本当かどうか過去報告を調べてみました。
①中小企業者に対する租税特別措置の適用範囲の見直し
②消費税の事業者免税点制度の見直し
③国外居住親族に対する扶養控除の適用要件の厳格化
④特定同族会社の留保金課税の適用除外の見直し
⑤居住用賃貸建物の取得に係る消費税の仕入税額控除の見直し
この5項目はいずれも節税スキームとしての運用を防止する意味合いがありました。今回の非上場株評価もその流れになります。
それでは、次回もよろしくお願いします。
【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版