今週の松竹梅第596号「節税スキームが通るか通らないかは運?」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

配信日:2024年12月2日
昨日の日経新聞社会面トップは、富裕層向け「節税スキーム」についてでした。記事内容そのものは特段新しい情報はないのですが、国税当局の「思想」については明確に読み取れました。富裕層のみが実行可能な節税は、「不公平だから許さない」と言うことです。日本は法治国家ですから、ルールは税法でしっかり決めてほしいのですが、税法は複雑すぎて、結局国税当局の担当者が決めているのが実態です。これでは人治国家です。富裕層や経営者は、この実態を理解しておくべきです。
【今週の松】 「節税スキームの4パターン」
職業柄、私も流行の節税スキームは多少理解しています。分類すると、「不動産投資型」「海外投資型」「組織再編型」「事業投資型」あたりがメジャーでしょうか。このうちもっとも安全なのが「不動産投資型」ですね。安全との意味は、もしも国税側の指摘でスキームを否認されても投資不動産は手元に残るからです。逆に、もっとも危険なのは、「事業投資型」です。こちらは、節税スキームというよりも、詐欺的スキームが多く、節税どころか、投資資金が手元から流出してしまいます。
【今週の竹】 「海外投資型や組織再編型は手数料が高い」
「海外投資型」や「組織再編型」は、複雑ながら説得力があるので、富裕層仲間から誘惑されやすい側面があります。節税コンサルチームの報酬も莫大な金額になりがちです。報酬が意外と少ないと感じたら要注意です。為替スワップやオプション取引で、クライアント側が得られるべき投資収益を報酬に振り替えているケースがあるからです。節税スキームではありませんが、10数年前に銀行が融資先に提案して流行した為替オプション取引は典型的な事例でした。簡単に説明すると、オプションの売りで得られるオプション料を0円にして、リスクを融資先に負わせて、オプション料を銀行が丸取りする仕組みでした(怒)。
【今週の梅】 「租税回避スキームとして否認するのは国税側」
今回のメルマガで富裕層や経営者にもっとも伝えたい部分です。租税回避スキームとして否認するのは国税側なのです。この種のスキームについては、安全なラインは存在しません。はっきり伝えると、通るか通らないかは「運」です。近年、租税回避スキームを否認されて裁判で争っているのは、元国税の大物OBだったり、有名税理士法人の専門家チームだったりします。彼らは、税法に精通してスキームを構築していますが、「租税回避行為」と認定されれば否認されます。それを決めるのは国税当局の担当者なのです。
【松ちゃんの独り言】 「危険な税法専門家のプライドと意地」
税法には、「同族会社の行為計算否認」や「相続税の総則6項」なる上から目線のルールが存在しており、国税当局側の「伝家の宝刀」とも言われてます。このルールがあるため、しばしば理不尽な否認事件が勃発します。対して、頭脳優秀な税法専門家チームがプライドと意地にかけて節税スキーム構築に取り組むパターンの繰り返しですね。否認された場合、このチームはクライアントから訴えられても、おそらく負けないでしょうし、報酬も受け取り済みです。対してクライアント側が失うものが大きすぎる気がします。
それでは、次回もよろしくお願いします。

【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版