今週の松竹梅第598号「自宅売却3000万円控除の落とし穴①」
ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

配信日:2024年12月16日
2024年も残り2週間になりました。今年は不動産譲渡申告依頼がやたらに多く、なかでも東京都内マンションの売却価額は驚くほどの高値が付いてます。とすると、気になるのが来年3月の申告所得税です。皆さん「自宅の3000万円控除」はご存じですね。ところが、この特例は意外と複雑で落とし穴も多いのです。
【今週の松】 「申告しないとアウトなのか?」
3000万円控除は申告しないとアウトなのか?と質問されれば、微妙な回答になります。当初申告で3000万円控除を使えば「期限後」でもセーフです。しかし、もしも医療費控除やふるさと納税で確定申告していて、「自宅売りは3000万円特例で税金0円だからいつでも良い」と考えていたらアウトです。つまり最初の申告で特例を使わないとアウトなのです。ですから、不動産仲介担当の方に、「3000万円特例はいつでもOKだから申告しなくても大丈夫」と言われたら、間違いではないのですが、非常に危険な考えです。
【今週の竹】 「建物が夫、土地が妻」
たまに聞くケースです。自宅敷地が、相続等で妻がすでに持っていた場所に、夫が住宅ローンで家を建てるパターンです。その自宅を売った場合、利益が出るのは、通常は土地ですね。しかし、この特例は、自宅(建物)を売った場合の特例です。
①建物と土地を同時に売ること
②建物と土地の所有者が親族で、生計一であること
③土地所有者が建物所有者と一緒に住んでいること
この3条件が揃っていれば、「2人合わせて3000万円」特例が使えます。建物が夫、土地が夫婦共有でも、まったく同じです。
【今週の梅】 「マンションで夫婦共有」
マンションに住んでいる夫婦で名義が共有の場合はどうなるのでしょうか?この特例は、建物名義に係る特例です。よって、このケースだと、なんと夫婦合わせて6000万円控除になります。とすると、上記の戸建てのケースで、建物部分を少しでも妻が持ってたら6000万円控除か?それでは、夫婦間贈与しておけばOKではと考えそうです。微妙な設定ですが、「すでに売り案件が進行していて控除額を増やすための贈与」だと、否認事例があります。「将来売るかもしれない」ならば、その時点で贈与しておけばセーフです。
【松ちゃんの独り言】 「3000万円控除を使うためのあの手この手」
3000万円控除は大きな特例なので、いろんな事例があります。別荘売却でなんとか特例を使いたいと、住民票を移しても、公共料金の使用状況や受取郵便物その他、そこで生活している証拠を要求されることがあります。また、引っ越してから売れるまで「もったいないから」と賃貸にだすケースがありますが、売れた段階では賃貸物件なので、これはアウト。まだまだありますが、次回に続きます。
それでは、次回もよろしくお願いします。

【松本直樹のプロフィール】
- 1960年
- 石川県金沢市生まれ
- 1984年
- 金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
- 1984年
- 太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
- 1992年
- 証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
- 1992年
- 太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
- 1995年
- 宅建主任者試験合格
- 1996年
- 税理士試験会計2科目合格
- 1997年
- 税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
- 1999年
- 松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
- 2006年
- 株式会社ケーエムエスを設立
- 2014年
- 総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
- 2016年
- 合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
- 2018年
- 経営革新等支援機関認定
- 2023年
- 「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版