今週の松竹梅第601号「ビットコインで投資税制を理解する①」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第601号「ビットコインで投資税制を理解する①」

配信日:2025年1月6日

改めまして、2025年もよろしくお願いします!2025年スタートの話題は、ビットコインで投資税制を再考することです。実は、2024年にビットコインをめぐる投資環境が激変しており、この傾向が2025年も確実に続きそうにも関わらず、例によって、日本の対応が立ち遅れています。明らかにビットコイン税制が環境激変への対応を邪魔しているようです。

【今週の松】 「圧倒的に不利なビットコイン税制」

ビットコイン投資環境激変の話題は少々複雑なので、まず現時点の日本のビットコイン税制が、驚くほど不利であることを説明します。(以下の試算は昨年12月に日経で紹介されてました)例えばビットコインを10年前に100枚買うと当時は460万円でした。そのまま10年間持ち続けると15億円ですね(笑)。ここで話題を終わらせれば、「すげー」「買っとけば良かった!」ですが、日経記事は、もしもこのビットコイン100枚保有者に相続が発生したら?から始まります。ビットコインの相続税評価は現金と同じ100%時価なので、おそらく最高税率55%が適用されるでしょう。相続人はビットコインを売らないと相続税は払えませんね。

【今週の竹】 「ビットコイン税制は完全に二重課税!」

さて、あまり知られてませんが、相続で取得した不動産や有価証券を3年以内に売ると、「相続税の取得費加算」なる特例があります。ざっくり言うと、払った相続税をコストにできるので、所得税が安くなります。そもそも不動産や有価証券なら分離課税で20%です。ところが、ビットコインは「有価証券」ではないので、この特例の対象外なのです。つまり、完全に二重課税状態ですが、現時点では国税当局は放置してます。しかも・・・・、ビットコインは投資税制の対象外なので、「雑所得」の総合課税なのです。つまり場合によっては、相続税で半分近く、所得税で残り全部でも足りないケースもあり得る、と日経は指摘していました。合計100%超税率?

【今週の梅】 「含み益のままでの逃げ場はあるのか?」

私も個別に知ってはいましたが、合わせて100%超税率があり得る認識はしていなかったので、日本のどこかにいるビットコイン長者はどうするのだろうと思いました。保有者は税制改正前に絶対突然死できませんね。では、税制改正を待たずに可能な対策は?と考えると、一つだけあります。それは、シンガポールや香港など、相続税や資産譲渡益課税がない国に移住することです。「出国時課税」は、現時点ではビットコインを対象としていません。不利な取扱いが、出国時課税制度では有利になるのは皮肉です。ただし、この移住が租税回避行為に当たる説もありますし、他の資産は出国時課税対象になることも要注意です。もしも自分がこの立場だったら・・・。年代によっては移住も大いにありですね。シンガポールなら運用環境も通信環境も良いですし(妄想です)。

【松ちゃんの独り言】 「プライベートバンカー」

2025年スタートのメルマガはあまり現実感のない話題でした。次回は、なぜビットコインが2024年に急騰したのか?の他、ビットコインETF(上場投資信託)とトランプ次期政権の方針などを踏まえて、投資税制を深掘りします。日本のどこかにいる超富裕層の話題はネタとして興味津々ですが、今週まさに「プライベートバンカー」なるドラマがスタートします!これは観たいかも。
 それでは、来年もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版