今週の松竹梅第603号「ビットコインで投資税制を理解する③」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第603号「ビットコインで投資税制を理解する③」

配信日:2025年1月20日

前2回のメルマガでビットコイン(暗号資産)の税制の仕組みやビットコインETFを説明してきました。今回は、ビットコインを巡る税務調査動向について刺激的な情報をお伝えします。国税当局が注目しているのは、「富裕層」「国際取引」「資産の多様性」です。よって、ビットコイン売買をしていない方も、今回の情報を必ず理解しておいてください。

【今週の松】 「国税当局の宝の山CRSとは?」

この衝撃を理解するには、まずCRS制度を知っていなければいけません。CRS制度とは、租税条約により、各国が自国の金融機関の非居住者情報を、居住国の税務当局に報告する制度です。報告事項は、氏名、住所、生年月日、口座番号、口座残高、年度の利子・配当、売却益など。日本の相続税や所得税は、日本の居住者に対しては、すべての国が課税対象なので、この情報は国税当局にとっては、まさに「宝の山」なのです。この制度は2017年の運用スタート以来、軌道に乗っており、最近の統計によると、年間250万件の口座情報が日本に届き、53万件の口座情報を日本から出しているとのことです。

【今週の竹】 「ビットコインもCRSの対象に!!」

香港やシンガポールで資産運用している日本人にとって、CRSは恐ろしい制度と言えますね。残念ながら、ビットコインなどの暗号資産もCRSの対象になると決定済みです。具体的には2026年分の情報を2027年に情報交換する予定とのことです。現時点でも、海外取引所でビットコイン口座を持っている日本人は結構いそうです。また、CRS制度の対象にするために、各国の取引所も非居住者だけでなく、居住者の本人確認や支払調書提出なども強化される方向です。よって、ビットコインの所有者は、2025年は動くか動かざるか悩ましい年です。

【今週の梅】 「富裕層と海外取引との関係」

このところよく聞く「富裕層」ですが、どれくらい持っていれば富裕層なんでしょう?意外と富裕層の定義は決まってなくて、よく言われるのが野村證券の「金融資産1億円以上」で、「5億円以上」は超富裕層だそうです。なんだかメルマガ読者も、金融資産1億円なら保険や有価証券も含めると大勢いそうですね。ただし、富裕層に該当すると、口座から口座への資金移動は監視されていると考えてくれぐれも気を付けてください。

【松ちゃんの独り言】 「確定申告とマイナンバー」

個人確定申告シーズン到来です。もともと確定申告書のマイナンバー記載は義務でしたが、空欄でも税務署から打診があるようなことはありません。2023年分で記載率は85.8%と意外と高いです。ただし、控除対象親族については空欄の方も多いのではないでしょうか。2024年分確定申告では、定額減税を受ける場合は対象者のマイナンバー記載が、減税の条件とされています。よって本人と家族のマイナンバー記載率はかなり上がりそうです。国税庁の悲願(?)だった国民の資金移動を机上で調査するシステムが完成間近です。定額減税はそのご褒美?
 それでは、次回もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版