今週の松竹梅第604号「相続税申告件数と税務調査統計」

ビジネスに役立つ!税務最新情報【今週の松竹梅】

今週の松竹梅第604号「相続税申告件数と税務調査統計」

配信日:2025年1月27日

例年12月は、税制改正案が与党から発表される月ですが、国税庁から、各税目別に申告件数や税務調査などの、興味深い統計資料が発表される月でもあります。今回はまず相続税について申告件数や税務調査動向について、発表資料を解説します。

【今週の松】 「相続税申告率は9.9%」

国税庁によると、令和5年の死亡者数は157万7千人で、相続税の申告件数は15万5千件、申告割合は9.9%でした。東京都にしぼると18.9%で、東京は申告率が高いですね。なお、10年前は死亡者数は127万人で相続税申告率は4.4%でした。私自身実感として、相続税申告は年1~2件程度でしたが、昨年は5件ありました。また、相続財産合計は22兆7千億円で10年前の約2倍になりました。

【今週の竹】 「税務調査率は5.5%」

ややタイミングはずれますが、相続税を申告すると、どれくらいの確率で税務調査があるのでしょうか?発表によると、8,556件とのことで、調査割合は5.5%になりますね。このうち調査で申告漏れを指摘された割合は84.2%です。申告漏れ割合も高いのですが、調査1件あたりの申告漏れ額は3208万円で、他の税目よりも高い傾向があります。一説には申告財産が3億円を超えると調査割合が上がると言われています。このラインを超える申告では、調査率を下げるため「書面添付」が必須です。

【今週の梅】 「最近の相続税調査の特色」

申告件数や財産総額はかなり増加していますが、国税職員は横ばいです。よって、国税当局は、実地調査以外の調査を重視しています。国税庁の調査統計によると、特にスペースをさいている項目は、「海外資産」と「無申告」です。前回までのビットコイン編で海外口座の情報交換制度(CRS)について解説しましたが、この制度による申告漏れ発覚事例が多いようです。被相続人が海外口座や海外不動産に財産を持っている場合、相続人が知らない場合もあるので、悪意無く申告漏れになることもありますね。

【松ちゃんの独り言】 「70歳が老化の分かれ道」

精神科医和田秀樹氏の著書「70歳が老化の分かれ道」を紹介します。6000人の高齢者を診察してきた和田先生によると、70代の生き方で今後を元気に過ごせるかどうかがきまるとのことです。具体的な主張は、これまでの「日本の常識」からは衝撃的です。高血圧、高血糖、高コレステロールを気にしないで好きなものを好きなだけ食べて良い、降圧剤はかえって認知症が進行する。と言われると、動脈硬化になったらどうするんだ!との反応になりますが、高血圧と動脈硬化等による死亡率統計は明確でなく、実は、日本の医療行政は米国のデータをそのまま持ってきており、日本人には合わないのではないか?と和田先生は主張しています。高齢者になってからが長くなってますので、どう生きるかを現実的に考えるべき1冊です。
 それでは、次回もよろしくお願いします!

松本直樹

【松本直樹のプロフィール】

1960年
石川県金沢市生まれ
1984年
金沢大学法文学部経済学科を5年で卒業(ドイツ語で1年間落第する)
1984年
太平洋証券(今の三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、主に債券トレーダー、デリバティブ業務に従事
1992年
証券アナリスト2次試験合格(会費未納で、アナリスト協会は退会)
1992年
太平洋証券退職後、税理士事務所へ転職
1995年
宅建主任者試験合格
1996年
税理士試験会計2科目合格
1997年
税理士試験税法3科目合格(税理士試験終了)→ちなみに法人税、所得税、消費税です
1999年
松本直樹税理士事務所として独立開業→税理士事務所の同僚(松本清美)と結婚ダブル寿退職
2006年
株式会社ケーエムエスを設立
2014年
総合コンサルチーム「みんなで顧問」結成
2016年
合同会社「みんなで顧問」設立(代表社員就任)
2018年
経営革新等支援機関認定
2023年
「マンガでコミュニケーション みんなの相続」出版